スマホが誕生して早くも10年が経ちました。
わずか10年しか経っていないのに、もはやスマホ無しの生活なんて考えられないですよね?
こんにちは! 松田軽太です。
では個人の生活ではなく、企業のITシステムはどのように変ったでしょうか?
多くの企業がSAP-ERPだとかクラウドだとかビッグデータだとかIot(アイ・オー・ティー)だとかAI(エー・アイ)だとかに巨額の資金を投資しています。
ITシステム無しに企業の運営は考えられないというのは、もはや常識となっています。
しかし企業の基幹システムを企画・運用している情報システム部・・・略して情シスに目を向けると「本当にITシステムが企業運営に無くてはならない重要な存在だと認識されているのか?」と首を傾げたくなります。
そう、現実の企業の中では情シスってのは謎で不思議な部署なのです。
情シスってどんな仕事なのか?
情シスの仕事は大昔から「社内業務の効率化」が大きな目的とされています。
しかし、これって考えてみたら、そもそもが無理ゲーなんですよ。
だってね、今まで自分で一度もやったことのない仕事を分析して、おまけに今まで何年もその仕事をやってた人に対して「こうやればもっと作業効率が良くなります!」なんて提案するんだから。
普通に考えたら、今まで自分でやったことのない仕事の効率化なんて、できる方がオカシイはずなんだけど、情シス部ってことになると何でも知ってて、何でも出来て当たり前のように言われます。
なんか理不尽ですよね。
思ってる以上に経営陣はITに疎い
まず前提として情報サービス業以外の会社の経営陣でITシステムを正しく理解してる人は非常に少ないと思って下さい。
もちろん「ウチの会社の経営陣は戦略的に情報システムを経営戦略として活用しているけど」という会社もあるでしょう。
しかし世の中、そういう会社ばかりじゃないんです。
企業にはCIOという最高情報責任者なんていう役職があったりしますが、それは上場企業のような大企業の場合です。
実際にこんなエピソードがありました。
経営陣が「我が社もiPhoneのようなイノベーションを起こして生き残りを賭けねばならない。イノベーションを探してきてくれ」と分かってるのか分かってないのか怪しい命題を腕利きの営業部長に命じました。
しかし、その営業部長。売上成績は素晴らしいのですがIT技術に非常に疎かったのです。何しろまだガラケーを愛用してるくらいですから。
まあ、営業という仕事で成果を上げているのだからガラケーを愛用してようが別に問題ないんですが。
とはいえ何をどうしていいのかサッパリ分からない営業部長は、とりあえずネットで検索して見つけたデジタル戦略セミナーに参加しました。
すると翌日、その営業部長はいささか興奮しながら「我が社のようなB FROM B企業もこれからはB FROM C企業に変革しなくては!」と言い出しました。
あまりにも興奮しながら話すので、「部長、FROMじゃなくてTOです」とは言えませんでした。
しかし、このエピソード。
営業部長が悪いというよりは、そもそもIT技術に疎い営業部長にそんな指示をした経営陣に問題があるハズです。
もちろん経営陣としても連日のようにIotだのAIだのという訳の分からない言葉がアチコチで大きく取り上げられていたら「我が社も何かしなくては!」と焦る気持ちも分かります。
何しろ洋服屋のユニクロですら「情報製造小売業に転換する」と言っているくらいです。
情シスは「利益を生まないコストセンター」だ
昔から情シスは利益を生み出さないコストセンターだと揶揄されます。
情シスの経費の多くはサーバーのリース料や機器やソフトウェアの保守料やデータセンターの家賃が占めます。
またパソコンやサーバー機器は壊れていなくても5年ごとに買い換えです。
(故障したときに交換する保守部品の保管期間が5年くらいだからなのですが)
しかしサーバー機器交換の稟議書を出すと・・・
「またサーバーの買い替えだと?この前、替えたばかりじゃないか?工場の設備はもう20年も修理ながら使っているだろ?工場を見習って情シスも壊れるまで使えばいいじゃないか!」
・・・という話は、経理課長や役員が代わるたびにしている気がします。
まぁ、人間、それなりに歳をとると時間の流れる感覚が速くて、5年前なんて「つい最近」なんですよね。
しかし残念ながら、どこの企業の情シス部でも似たような扱いだと聞くから、これまた不思議です。
情シスという名の「何でも屋」
企業の情シスというと、デジタル戦略だのデジタルイノベーションといった最先端な技術を使いこなす煌びやかなイメージがあるかもしれないですが、現実は真逆です。
特に中小企業の情シスは床下にLanケーブルを這わせるといったメチャメチャ地味な作業も行います。
なので、もしそういう煌びやかな最先端な技術を駆使したいのであれば、情報サービス業を目指すべきです。
少なくとも中小企業の製造業の情シスは「何でも屋」だと覚悟して下さい。
なにしろ社長がiPhoneを機種変更したら、iPhoneのデータ移行までやらされます。
普通に考えれば、そんなの自分で携帯ショップでやればいいと思うでしょうが、「携帯ショップは混むからなぁ。そうだ、iPhoneも持ち運べるパソコンみたいなものだから、情シスでやらせればいいじゃないか」と考えたりします。
他にも「孫の買った任天堂Wiiの設定をしてくれ」とか・・・もう何でもありなんです。
しかし、まぁ、経営陣の役割は事業運営であり利益を上げることであって、情報システムを使いこなすことではありません。ということで仕方がないと諦めましょう。
情シスの役割は最先端技術を使いこなすことではない
中小企業での情シスの役割は最先端技術を使いこなすことが目的ではありません。
数あるIT技術の中から「どれを使えば、コストを掛けずに業務効率をあげることができるか?」を考えることが求められます。
例えば「生産実績を入力する」という仕事を効率化する場合、AIを使うことで効率化できるでしょうか?
この場合であれば、AIよりも事務処理を自動化するRPAの方が向いています。
製造業であればIotをどう使うかもテーマになります。しかしアチコチに設備にセンサーを取り付けて大量のデータを取得して、それを具体的にどのようにすれば役立つように利用できるでしょうか?
Iotを使うにも様々な機器やソフトウェアを購入することになるので、費用対効果が出せることが必要条件となります。
場合よっては新しいシステムを導入するより、アルバイトを雇った方が効果がでるという可能性もあるかもしれないのです。
情シスって何やってるか知らない人が多い
ところで皆さんの会社には情報システム部ってありますか?
「ある」という場合、情報システム部ってどんな仕事をしていると思いますか?
こんな質問をしたらこういう回答を耳にします。
「あぁ、情シスってパソコンを入れ替えてる部署でしょ?」←まぁ、そうですけど。
「給与明細を印刷してる部署でしょ?」←それは総務ですが・・・。
「Excelが分からなくなったら教えてくれる部署でしょ?」←少しは自分で調べてよ・・・。
営業であれば売上成績という目に見える実績があります。
製造ラインであれば、実際に機械を操作しているので目に見えます。
しかし情シスの扱うプログラムは、なかなか目に見えにくいのです。
情シスという部署には「やりがい」はあるのか?
・・・と、ここまで読むと情シスって完全なハズレ部署としか思えませんよね?
安心してください。
直接、関わりのあった人からは感謝されますから。
例えばこんな例があります。
営業事務のスタッフは毎月、月初に10種類の営業会議向けの資料を1種類につき30分かけていました。
30分とはいえ10種類もあると5時間近くかかるので、ほぼ1日仕事です。
そこで情シスで売上実績集計をプログラムを作成し自動化してあげたら、今まで5時間かかっていた作業が、わずか10分で終わるようなりました。
こういう風に関わった人からは、もちろん感謝されます。
また社内のほぼ全部署のデータを管理しているので、原料仕入れ・製造・在庫・販売・請求といった社内の全ての仕事の流れを正しく理解しているのは、情シスのメンバーだけでしょう。
・・・というかそれを理解していないと基幹システムを管理することなんて出来ません。
社内システムが大きな事故なく運用できているのは情シスが適切に管理しているからなんです。
情シスの役割を一番実感させる方法があるとするなら、数日、情シスのメンバーが誰も出社しないという手かもしれません。
きっと「あれが出来ない、これが出来ない」と大騒ぎになるでしょう。
まぁ、後始末が大変なので、そんなことはやりませんが。
いずれにせよ、小さな喜びはあるものの、それ以上にある種の理不尽さに耐える覚悟がなければ、中小企業では情シスを希望しない方がいいかもしれません。
ざっくりとしたまとめ
ということで情シスを志す方へのアドバイスは、情報サービス以外の企業だと、ほとんどの経営者はITリテラシーが低いので、最近のテクノロジーの導入を提案しても、なかなか承認してくれません。
なので、最先端技術を使いこなしたいというのであれば、情シスは向いていません。
しかしSIerなどでのシステム開発は予算や期間という契約ありきの付き合いになりますが、実際の現場では契約範囲の中で利用者が便利に思ってもらえる機能を完備することは難しいでしょう。
情シスの社内SEのメリットは社内に常駐しているからこそ、利用者に寄り添った決めの細かいサービスを提供できるということです。
また経営陣はITテクノロジーに詳しくないので、うまく説得できれば、自分の理想とするシステム構築も可能です。
これから企業の情シスを目指すのであれば、このような考えで仕事に取り組むと、楽しめると思います。
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