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企業の情シスで働いています。会社の中では何をしてるのかナゾな職場の情シスあるあるなどや読んだ本のことなどを思いつくままに書いています。

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入山章栄氏の「イノベーションの本質」を聞いて「なぜ日本の会社はイノベーションを起こせないのか?」を考えた

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GAFAの大躍進以降、あちこちの会社で「我が社もイノベーションを起こせ!」と大号令がかかっているわりには何も出来ていないという会社も多いんじゃないでしょうか?



こんにちは! 松田軽太です。

 

ということで社会学者の入山章栄氏の「イノベーションの本質」というセミナーを聴いてきましたので、ブログにまとめたいと思います。

 

イノベーションを起こす目的って何?

まずイノベーションを起こす目的ってなんでしょうか?

 

これはもう「今までと同じことをしていたら、将来、事業自体がなくなる可能性が高いから」ですよね?

 

特に日本企業は高度経済成長以降「同業他社よりも良い性能で安い商品を売れば儲かる」という成功体験に慣れきっていました。

まぁ、それが今までの「勝つための王道パターン」だったのだから、そうなるのは当然ですが。

 

だから「他社よりも業界シェアを確保しろ!」といったマーケットシェアの拡大を事業目標に掲げている会社も多くありました。

 

しかし、以前に比べるとマーケットシェアにこだわる会社が減ってきています。

 

何故ならGAFAに代表するような異業種から破壊的イノベーションで攻めてこられたら、シェアが3%上がったとか5%下がったとか、みみっちい話ではなく会社そのものが存在できなくくらい、コンテンパンに負かされてしまうということが、現実に起こっているからです。

もうイナゴの大群が攻めてくるみたいに根こそぎ荒地になってしまいます。

 

例えば10年前の携帯電話業界であれば、docomoとauとソフトバンクがどういう商品や料金体系なのかで競えばよくて、少なくとも競争はこの3社の中でしか起こりませんでした。

 

ところが今はスマホのOSはアップルとGoogleに握れてしまい、スカイプやLINEで通話コストは無料になり、格安スマホで楽天やイオンやビッグカメラといった異業種から通信事業に沢山の企業が参入してきています。

 

今までのように同じ生態系の中で棲み分けできる世界に、ある日、突然、外来種が襲ってくるような感じです。

 

今期、2兆円の利益を出し絶好調と思われるトヨタ自動車では「いずれ自動車という商品はなくなる」という物凄い危機感を持っています。

 

10年前であれば「いずれ自動車はなくなるんだからトヨタ自動車がヤバい」なんて考えられないですよね?

 

あるいは大手都市銀行ですら、大規模なリストラを計画しています。

 

これも少し前までは考えられない話ですよね。

 

ではイノベーションを起こすために必要なのはなんでしょうか?

 

イノベーションとは異なる性質を組み合わせること

入山章栄氏は「知の探索」が必要だと言います。

 

知の探索とは、異なる2つの物を組み合わせて新しい物を作り出すことです。

 

日本の会社で有名なイノベーションといえば、世界に名だたるトヨタ生産方式でしょう。

 

トヨタ生産方式の肝となるカンバン方式のアイデアはアメリカのスーパーマーケットを訪れたさいに「作業者が必要な部品を必要量だけ使えば無駄な作り置きがなくなる」という着想を得たことから始まりました。

 

つまり「自動車製造 + スーパーマーケット」という全く異なる2つを組み合わせることで生まれたイノベーションです。

 

TSUTAYAでのレンタルCDという事業の発想は、消費者金融なのです。

 

消費者金融は1000円を貸す代わりに10日で100円の利子を取ります。いわゆる十一の高利貸しです。

 

レンタルCD店は1000円で仕入れたシングルCDを3日100円で貸します。 

つまりTSUTAYAというビジネスモデルは3日で一割だから、高利貸しよりも高い利益を得られるのです。

 

ということに気が付いたTSUTAYAの社長はレンタルCDを事業化したのです。

 

このように全く異なる事業領域を組み合わせることで、新しい価値が生まれます

 

一方で多くの会社で取り組んでいるのは、イノベーションではなくカイゼンであることが多いのです。

 

カイゼンのようにその商品やサービスを磨き上げて利益率を高めることを「知の深化」といいます。

 

多くの企業では、自分たちがイノベーション(知の探求)だと思っていても、実はカイゼン(知の深化)であることが多いのです。

 

でもそれは当たり前で、自社の事業領域の中で組み合わせを繰り返しても、今まで世の中に無いものを作り出すのは、極めて難しいでしょう。

 

例えば「チャーハンにイノベーションを起こす」と考えて「これは新しい!」と思ったものが、中華丼のあんをチャーハンにかけたものだとしたら、それはイノベーションだとは感じないでしょう。ただ味のバリエーションが増えただけです。

 

と、なぜこういう発想になるのがといえば、厨房という、いつも自分が料理している中だけで、組み合わせを考えてしまうからなのです。

 

それと同じように自社の中や同じ業界の中だけで異なる商品やアイデアの組み合わせを考えても、すでに出尽くしているのです。

 

だからイノベーションではなくカイゼンになってしまうんですね。

 

しかし、とはいえイノベーションなんて、そう簡単に生まれるわけではありません。

成功したイノベーションの影には、大量の失敗事例が転がっています。

 

今でこそスティーブ・ジョブズはiPodからiPhoneまで、何を出しても成功する天才的なイノベーションの達人みたいに言われていますが、実は沢山の失敗をしているのです。

 

でも、それらの失敗を多くの人は知りません。

何故なら世の中に普及しなかったから、失敗したのであって、人々に知られる機会がないのです。

 

スティーブ・ジョブズの失敗作はといえば

 

・アップルTV

・iPodシャッフル

・iMacのマウス

・PING

 

などが挙げられます。

 

実はスティーブ・ジョブズの発明品をヒット率は1割程度ではないでしょうか? 

つまりイノベーションとは沢山の失敗作の屍の上に成り立っているのです。

 

しかし、こういうことは頭では分かっていてもなかなか出来ないですよね。

 

よくあるのが部門横断型の「新商品開発プロジェクト」とか「イノベーション開発プロジェクト」といった特命チームが発足しますが、ほとんどのそうしたプロジェクトでは、最初は「知の探索」をするのですが、数ヶ月経つと「知の深化」でお茶を濁します。

 

その大きな理由は日本企業の多くが導入している業績評価制度にあります。

 

多くの企業では半期ごとに仕事の結果を査定すますが、イノベーションのような長期に渡る開発は半年程度で成果なんかでるわけありません。

 

そもそも半年程度で簡単に成果なんか出たら世の中、イノベーションだらけになります。

誰も苦労なんてしませんよね。

 

つまり日本企業でイノベーションが生まれない大きな理由は短期で結果を求める評価制度や人事制度にあるといえます。

 

だからそれなりに結果(利益)の出せるカイゼン(イノベーションではない)でお茶を濁して終わってしまうのです。

 

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