コンビニは今や社会インフラともいえる貴重な存在です。
こんにちは! 松田軽太です。
しかし昨今は人手不足からアルバイトが集まらず、24時間運営が難しくなりつつあります。
と「コンビニを今のまま維持するのは、もはや難しいのでは?」と多くの人が心配になっているのではないでしょうか?
コンビニは新しい業態のように思われていますが、すでに40年以上が経っています。
この40年の間に日本の社会は大きく変わりました。
ということでコンビニの抱える問題って何だろう?と思って『セブンイレブン 鈴木敏文帝国崩壊の深層』という何やら物騒なタイトルを本を見つけて読んでみました。
コンビニオーナーの苦悩
全国に5万店もあるコンビニですが、直営店はほとんどなく多くはフランチャイズ契約をしたコンビニのオーナーは独立した事業主になります。
しかしこのフランチャイズ契約というのがクセモノで、この契約によってコンビニオーナーはコンビニ本部に縛られています。
24時間営業、仕入れ価格の不透明、コンビニ会計、ドミナント戦略、チャージ料、といったコンビニ独自の戦略がコンビニオーナーを締め付けているのです。
このあたりの事情は、僕のような普通のお客として利用している分には実感がありませんが、コンビニオーナーからすれば、死活問題です。
コンビニ本部の利益率が凄い
驚いたことにコンビニ本部の利益率は他の業種に比べて絶大です。
- セブンイレブンの利益率は31%
- ローソンの利益率が14%
- ファミリーマートの利益率が12% です。
(2014年の実績)
これを見てもセブンイレブンの利益率は絶大ですね。
ちなみにトヨタ自動車の利益率は6%、
マクドナルドの利益率は8%、
マツモトキヨシの利益率は4.3%、
ライフ(スーパー)の利益率は1.4%
・・・なのでコンビニ本部の高収益体質がよく分かるでしょう。
そういえばアップル社の利益率が30%なので、セブンイレブンの利益率はアップル社と同じなのです。
これではコンビニオーナーが「本部は儲けすぎだ」と批判したくなるのも、まぁ、分かりますね。
高額なチャージ料(ロイヤリティ)
コンビニ経営のノウハウのないオーナーに対してコンビニ本部は経営ノウハウを提供します。
それに対してコンビニオーナーはコンビニ本部にチャージ料という指導料を支払います。
実はこれが結構な高額なのです。
セブンイレブンの場合はセブンイレブンチャージと呼ばれていて、
- 250万円以下の粗利で56%
- 250~400万円で66%
- 400~550万円で71%
- 550万円以上だと76% です。
まるで累進課税ですね。
550万円だと本部に418万円を上納するのでコンビニオーナーに残るのは132万円。
でも132万円の中から廃棄代やアルバイト代を支払うので、実際にオーナーの手元に残るのは30万円程度です。
平均的にはコンビニオーナーの年収は300万円程度だとも言われています。
これでは会社員以下ですよね。しかも24時間営業をしなければならないのだから、割な合わないですよね。
24時間営業
契約の中には24時間営業についても記載されており、そのため深夜にアルバイトが見つからなければ、オーナー自身が深夜勤務を余儀なくされます。
人手不足の社会では、これが今、大きな問題となっていますね。
ロスチャージ会計
これもコンビニ独特の会計システムで、コンビニ会計とも呼ばれています。
一番の問題は廃棄した商品の仕入れ分についてもコンビニ本部にロイヤリティを支払うというものです。
つまりコンビニ店舗が商品を仕入れさえすれば、コンビニ本部は儲かるという仕組みです。
これによって恵方巻の大量仕入れと大量廃棄という問題が発生しているのです。
しかも賞味期間が近づいた商品でも原則、値引き販売は許されないようで、かといって廃棄に掛かる費用はオーナー持ちなのです。
そういえば賞味期間切れの商品を販売しているコンビニがあって速攻で契約解除になり閉店しましたが、それもこういう問題から起こっているのでしょう。
商品仕入れは本部からしかできない
コンビニオーナーは独立した事業主であるということになっていますが、コンビニ本部以外から商品を仕入れることはできません。
そして仕入れ値も開示されないのだとか。
独立した事業主という定義なのに、自分がいくらで商品を仕入れているのかも分からないなんて、他の小売業ではありえないでしょう。
全然、自由に商売できないわけです。
ドミナント戦略
コンビニオーナーを悩ます大きな問題がドミナント戦略でしょう。
ドミナント戦略とは「地域に集中して出店することで配送効率があがり、地域に対してコンビニブランドの認知度が上がり、その結果、売り上げが向上する」というのです。
・・・が、ある日突然、500m先に同じブランドのコンビニが開店したら、前から営業していたコンビニの売り上げは下がりますよね。
お客さんはより近い方で買い物するわけですから。
また売り上げが下がる他に、他店にアルバイトを奪われてしまうのです。
いうなれば共食いです。
本書によると日販が80万円を超えるお店があったら、その近くに出店することになっているのだとか。
人手不足のこの時代、コンビニオーナーにとっては、これがかなりキツいのです。
オーナーの犠牲の上で築かれた利便性
と、このようにコンビニという業態の裏側を知ってしまうと、社会インフラと呼ばれるまでになったコンビニという利便性は、実はコンビニオーナーの犠牲の上に成り立っているように感じられます。
もちろん全国に5万店もあれば、上手く経営できているお店もあれば、上手くいかないお店もあるでしょう。
かといって今更、コンビニのない生活というのも考えられないですよね。
このあたりは社会的な課題なのでしょうが、解決策は見いだせないのが現実でしょう。
コンビニが生み出したモノ
と、ここまでコンビニ経営の闇の部分を書きましたが、しかし、コンビニから生まれたサービスもたくさんあります。
今では当たり前なおにぎりも昔は家庭で作るものでお店で買うものではありませんでした。
コンビニ弁当も劇的に美味しくなり、コンビニコーヒーは今やコーヒー全体の売上の二割を占めています。
また公共料金の支払いや宅配便の発送もコンビニがあるから自宅の近くで済ませられるのです。
コンビニATMのおかげで24時間営業、お金が引き出せます。これからはキャッシュレス社会になるので、コンビニATMなんてオワコンだという声もありますが、まだまだ日本は現金社会です。
これらのサービスを開発しているのはコンビニ本部です。
コンビニオーナーがいくら頑張っても、ここまで美味しくなったお弁当やサンドイッチを開発することは無理でしょう。
これらの便利で画期的なサービスもコンビニという巨大な店舗網があるからこそ実現できているのです。
これから日本社会はどう変わるか?
日本は今、人口減少社会に向かっています。
コンビニが始まった40年前とは大きく環境が変わってしまいました。
Amazonや楽天といった通販の発達し、書店など多くのリアル店舗が打撃を受けています。
2020年代は5Gという大容量の高速通信時代になりますが、それにより自動運転が実用化されるので、ドライバーは失業するとも言われています。
コンビニの常連さんにはドライバーも多いのではないでしょうか?自動運転が普及すると、そういったドライバーの常連さんが居なくなるのです。
反面、高齢者が増えるので、遠くの安いスーパーよりも近くて便利なコンビニの方が需要があるかもしれせん。
高齢者は食事の量は少なくなるので、若者向けの大盛り弁当では食べきれません。
あるいは無人コンビニのシステム化により、深夜のアルバイト不足に対応できるかもしれません。
ということでこれらの社会の変化に対応できなければ、いずれ破綻してしまうでしょう。
(まぁ、それはコンビニに限った話ではありませんが)
もし、これからコンビニオーナーを目指すのであれば、これからの社会の変化にも目を向けて、フランチャイズ契約するべきなのだろうと思います。
コンビニオーナーになってはいけない 便利さの裏側に隠された不都合な真実
- 作者: コンビニ加盟店ユニオン,北健一
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