みなさんは『IBMのAS400』ってコンピューターはご存知でしょうか?
「あー、昔、会社で使ってたみたいだけど」と思う人も居るでしょうし「ウチの会社はまだ使っているみたいだけど、さっさと別のシステムに載せ変えちゃえばいいのにね」と内心、思っている人もいるでしょう。
こんにちは! 松田軽太です。
AS400ってなんなん?
AS400はコンピューターメーカーの巨人と言われるIBM社が開発したオフコンです。
「は?オフコンって何?パソコンの間違えじゃないの?」と思われるかもしれませんが、オフィス・コンピューターの略なので、オフコンです。ちなみにパソコンはパーソナル・コンピューターの略です。
詳しい説明はこちらのサイトから引用します。
AS400とは今で言うIBM iのことです。正式な表記はAS/400で、1988年に発表されたIBMのミッドレンジコンピュータシリーズの名称になります。
OS/400という固有のOSを搭載しており、DB2というデータベースがシステム部分に組み込まれています。
このようにOSには別の名前があるのですが、当時はOSという概念すら浸透していなかったためか、筐体もOSも全てひっくるめて「AS400」や「AS」と呼ぶユーザーがほとんどでした。
その後性能の向上にあわせてシリーズ名称は変わっていきました。AS/400、eServer i Series、System i、Power Systems、という変遷です。そして、OSの名称も、OS/400、i5/OS、IBM i(※1)と変わっていきました。しかし、その変遷がかえってユーザーを混乱させてしまったのかもしれません。
各シリーズを利用するユーザーの共通言語として、いつしか「AS400」および「AS」が「AS/400からはじまる一連のシリーズの愛称」のような位置づけで使われるようになりました。今でも「AS400」や「AS」という名前がユーザー間で利用されているのは、それが理由です。
当然ながら購入したシリーズ名できちんと呼んでいるお客様もいますし、たまたま一番最初に使ったシリーズ名を今でも呼び名に使っているお客様もいます。そのため、このように呼び名が複数あるような状態になっているのです。
1988年に発表されたというので、かれこれ30年の歴史があるコンピューターなのです。
その後、製品戦略に合わせて製品ブランドも変わったのですが、なんだかんだで発表当初のAS400と呼ばれているわけです。ブランド戦略がうまく行かなかったのですかね。
AS400はどれくらい使われているのか?
はっきりした数字は不明ですが、この30年で全世界で100万台が販売され、そのうち1割が日本企業での導入だと聞いたことがあるので、10万台くらいは導入されていたのでしょう。
NECや日立といった国産メインフレームの稼働台数が全体で1万5000台程度だと聞いたことがあるのでそれに比べるとAS400の導入数は多いようです。
今でも多くの自動車メーカーや化学系製造業などで現役で稼動しています。
おそらくバッチ更新などバックエンドでの運用が多そうなので、みなさんの目に触れることが少ないのでしょう。
AS400って何が良いのか?
AS400の最大の特徴はOSとデータベースとアプリケーションが融合しているという点でしょう。
それだけ聞くと「はぁ? 何言っているの?」となりますよね。
これはAS400というコンピューターの設計思想が、現在のコンピューターと大きく違うのです。
AS400はIBMがCPUからOSからデータベースから筐体まで設計しているオールインワンのコンピューターなのです。いわゆる垂直統合の開発です。
WindowsはOSをマイクロソフトが開発し、CPUをインテルが開発し、データベースはOracleやSQLサーバーなど自分で選択します。これを水平分散といいます。
アップル社はOSや筐体はアップル社で設計しているし、iOS向けのCPUは自社開発なのでどちらかというと垂直統合寄りですかね。
ということでAS400はIBMが全部作っているのでマシントラブルが少なく、顧客満足度の高い製品となっています。要するにユーザー側にファンが多いのです。
またOSも細部までよく出来ており、次のような特徴があります。
エラーでとまらない
ウィルスの心配がない
コマンド群が使いやすい
レガシー機能の継承
新機能の追加
などなど、古い技術から新しい技術までをうまく継承していけている稀有なシステムになっています。
最大の特徴は単一レベル記憶
AS400を語る上で特に特筆すべきは、単一レベル記憶(SLS=SINGLE LEVEL STORE)を採用しており、AS400が使っている記憶装置すべてを、アプリケーションソフトウェアに対して主記憶装置(メモリ)と補助記憶装置(ディスク)の区別を意識させずにただ一つの、巨大なアドレス空間で管理するので入出力が非常に高速であるなどの特徴があります。
なのでメモリ上でデータ更新するのでディスクへの書き込み回数が少なく、更新処理は爆速です。
国産メインフレームとAS400の性能を比べると処理能力で50倍以上もあるというデモを見たことがあります。
実際に見たデモでは100万件のレコードを更新するのにわずか1秒くらいで更新していました。
この更新処理の高速性が夜間バッチ処理で絶大な効果を発揮します。
事例で見たのは、それまで国産メインフレームで毎日9時間掛かっていたバッチ処理と同じ更新をAS400で実行したら、わずか30分で終わったといいます。
逆にAS400から別のWindowsシステムに移行したら、バッチ処理が終わらないといった事例もあったりします。
AS400は値段は高いのか?
AS400を導入するとおよそ2000万円くらいだと言われています。オールインワンなので筐体、データベースなどコミコミですが。
Windowsシステムだとサーバー機器やデータベースなど何を選択するかで変わるでしょうが、1000万円以内で収まるでしょう。
そう考えるとAS400の価格は倍のように見えますが、一般的なWindows系サーバーを提供しているメーカーの部品保守期限は導入から基本は5年です。AS400はIBMでの部品提供が8年なので3年長く使えるのです。
以前は平均して12年もの間、部品提供していましたが、昨年から8年と短くなりました。
この辺りが判断が微妙になるところで「価格は倍だけど12年使える」であれば、まぁ、納得できるのですが、「価格は倍だけど8年使える」だと、ちょっと損な感じがしますよね。
国産メインフレームだと数千万円から1億円かかるでしょう。
それであればCOBOLみたいなレガシー言語で動いているシステムを使い続けなくてはならないのなら、思い切ってAS400にリホストするのも一つの手でしょう。
COBOLをそのまま持って行くのであれば、差額分で移行できそうです。
国産メインフレームはいつなくなるか分からないという不安との戦いになりますが、少なくともAS400はあと20年は残っていると思いますから。
AS400はソフトウェア資産を継承できる
AS400で構築されるシステムの言語はRPGというIBMの独自言語が多いでしょう。もしくはCOBOLでしょうか。
一応、JavaとかPHPとかPythonも使えるそうですが、あまり事例を見ないように思います。
たぶん、圧倒的にRPGで組まれていることが多いでしょう。
RPGにせよCOBOLにせよ昔から使われているプログラム言語ですが、AS400はずっと移行を保証しています。
30年前に構築されたRPGプログラムであっても、最新のAS400で稼動させることができるのです。
ということは、AS400を使っていれば確実にプログラム資産を継承できるので、2000万円かけて筐体の入れ替えすれば、移行できるので運用が簡単なのです。
データとプログラムを移行すれば良いので土日の2日で移行できちゃうでしょう。
PRGってなんなん?
RPGというIBMの独自言語ですが「Report Program Generator」の頭文字をとったのが名前の由来です。なので、もともとは帳票作成がその発祥のようですが、それ以外の更新処理なども、もちろん可能です。
RPGというプログラム言語自体は、それほど難しいものではないので、他のプログラム言語を理解していればなんとか習得できるでしょう。
確かCOBOL言語と比べると6倍の生産性と謳っていたと思います。
しかし、初めてプログラムを組むという人にはどうかな?と思います。
いまだに白黒画面なので、古臭いんですよね。
2000万円もするのでパソコンみたいに個人で買えるようなモノではないので、学習機会が少ないのです。
あまりネットにもRPGの情報ってないですから、独学は不可能だと思います。
またIBMが販売している学習書もそうとう内容が古くて、おそらく20年くらい内容が変わってないんじゃないかと思います。
これからもAS400を使い続けることができるのか?
と、まぁ、AS400を擁護しているような内容を書いてきましたが、これから先もAS400を使い続けることが正しいのか?というと、個人的には懐疑的です。
まず大きな問題としてRPG技術者が少ないという点です。PRG技術者はおおむね50代だと言われています。
彼らが20代のときにRPG言語に接して、30年間、開発し続けたと考えると合点がいきます。
まぁ、JavaやPHPやPythonでも開発できるとは言っても、だったらAS400じゃなくても良いでしょう。
これから経済的に発展していくであろう新興国の会社が新たなシステムを作るとしても、AS400って選ばないですよね?
AWSなどのクラウドを活用するはずです。
そう考えると、徐々にユーザーは減っていくでしょう。
とはいえ「DX-2025年の崖」を読むと、多くの企業は動く間はハード入れ替えを続けて延命しそうなので、まだまだ30年くらいは生き残りそうですが。
AS400ユーザーはどうすればいいか?
AS400自体は製品開発もまだまだ続くので、今すぐに無くなることはないでしょう。
なので慌てることはないですが、運用できる人がいるうちに10年先とか20年先といった長いスパンで自社のシステムをどうすべきか考えるべきでしょう。
このまま使い続けるという判断をするのであれば、AS400を使える技術者を確保する方法を考えないといけないし、AS400を止めるのであれば、移行先のシステムは何が最適なのか?を考える必要あります。
いずれにせよ、今から考えておくことです。
これから使う人のためのIBM i入門ガイドを見つけた
ということでこのブログを書くにあたって、久々にAS400を調べてみたらこんなサイトがありました。
保存版「これから使う人のためのIBM i入門ガイド」(全42章を公開)
このサイトの記事を一通り、目を通すとAS400ってなんなのかが分かると思います。