いつものようにツラツラとツイッターを眺めていたら、気になる話題に目が止まりました。
元ITエンジニアによる、老舗企業の変革ストーリー。こういう話は素直に嬉しい。 IT業界出身者が非ITの分野で価値を出すことで、IT業界とエンジニアのプレゼンスが高まるって信じているから。https://t.co/lss5niFkmG via @BIJapan
— 沢渡あまね新刊 #仕事ごっこ #しごつれ 発売中 (@amane_sawatari) 2020年2月19日
沢渡あまねさんがご紹介してくださったのが、この記事です。
■イシイのミートボールの石井食品が、75年で変えたこと変えなかったこと
「イシイのミートボールって、そういえば子供の頃、よく食べたなぁ」と懐かしくなり、ツイートされた記事を読んで、さらに驚きました。
ところで「イシイのミートボール」とは
ちなみにこちらが「イシイのミートボール」のサイトです。
このサイトの中でも目をひいたのが「イシイのミートボールのこだわり」です。
パッケージに無添加調理と書かれていますが、ミートボールの原材料を見るとすごくシンプルなのが分かります。
原材料名:
鶏肉(岩手県産)
たまねぎ
つなぎ(パン粉)
砂糖
しょうゆ
しょうが汁
食塩
醸造酢
なたね油
ソース
あまり家庭で馴染みのないカタカナ名の添加物が一切、使われていないのです。
素直に驚きました。
5代目社長はアクセンチュア出身のスクラムマスターという意外性
現在、石井食品株式会社の代表取締役社長は石井智康氏です。
創業者のお孫さんにあたるそうです。
記事の中のプロフィールを見て驚きました。
PROFILE:石井食品株式会社 代表取締役社長執行役員 石井智康
千葉県船橋市出身。
2006年6月にアクセンチュア・テクノロジー・ソリューションズ(現アクセンチュア)に入社。ソフトウェアエンジニアとして、大企業の基幹システムの構築やデジタルマーケティング支援に従事。
2014年よりフリーランスとして、アジャイル型受託開発を実践し、ベンチャー企業を中心に新規事業のソフトウェア開発およびチームづくりを行う。
2017年から祖父の創立した石井食品株式会社に参画。2018年6月、代表取締役社長執行役員に就任。地域と旬をテーマに農家と連携した食品づくりを進めている。
認定スクラムプロフェッショナル。
もうゴリゴリのITエンジニアではないですか!
石井食品はアジャイル型食品メーカー
石井食品株式会社の設立は1945年だから、なんと創業75年にもなる老舗企業です。
『老舗の製造業』にありがちなのが、長年に渡る縦割り組織で部門間の風通しが悪く、仕事も属人化が蔓延しているという『昭和企業病』です。
石井食品の内部事情は分かりませんが、おそらく2018年にアクセンチュア出身のITエンジニアである石井智康氏が5代目社長に就任するにあたり、それまで見てきたITエンジニアの世界と老舗製造業の世界では大きなギャップを感じたのではないかと推察します。
「その辺りを知りたいなぁ」と思い、石井智康氏の名前でググったら、なんと『サイボウズ式』に青野社長との対談記事がありました。
■5代目社長はスクラムマスター。ミートボールの石井食品は70年前からアジャイル型組織だった──石井智康×青野慶久
インタビュー記事を読んでいくと、やはり、そういう話もありました。
青野社長:社長になってからいかがですか? 業種が変わって、文化を含めていろいろな面で異なることがあると思いますが。
石井智康氏:入社後、社用のメールアドレスを持っていない社員が多かったことには驚きましたね。たしかにITが必ずしも必要ではない現場もあるのだなと。IT業界と比べて食品業界がおもしろいと思うのは、ITは使わない人がいるのに対し、「食事をしない人はいない」ということですね。
確かにそうですよね。ITサービスの食わず嫌いはよく目にしますが、食事はみんなしますものね。
そんな石井食品ですが、今ではSlackで情報共有し、マーケティングの部署ではカンバンを導入したというからさすがIT業界出身の社長です。
しかし、それよりも驚いたのは石井食品という会社の社風です。
人気商品のハンバーグは販売当初、毎日、味が変わっていたのです。
直売所でお客さんから聞いた「しょっぱい」とか「甘い」という味の評価を工場に伝え、毎日、開発会議を始めていたのだとか。
それってまさにスプリントレビューです。それを毎日、行いPDCAサイクルを廻していたのだから驚きです。
そう考えると青野社長がおっしゃるように石井食品はまさに「アジャイル型食品メーカー」なのです。
アジャイルな発想はこれからあらゆる業種の商品開発やサービスに有効
石井食品の根底にある「日々、お客さんの声を聞いて商品を改善する」というアジャイル体質は、これから変化の激しくなる市場や社会では非常に重要な考え方になるのでしょう。
言葉としての「カイゼン」「カンバン」「アジャイル」「PDCA」に捕らわれるのではなく、「品質を向上させたい」という想いをもって行っていた活動がスクラムっぽかったのです。
そういえば以前、カルビーが「かっぱえびせん」をタイで販売したところ、タイのお客さんとっては味が薄くて物足りずにあまり売れなかったのだとか。
そこでタイのお客さんに受け入れられるような味に調整したところ、カルビー社内で大問題になったのです。
「98年に東京の本社で開催された海外拠点の報告会で、『味をタイの消費者の好みに合わせたことで売り上げが伸びた』と報告したら、いきなり役員会の雰囲気がピリピリしたんですよ。
あれ、何かマズいことでも言ったのかなと怪訝に思っていたら、報告会が終わった後、当時の常務が困った顔で部屋に入ってこられました」
常務は厳しい顔で大山氏にこう告げたそうだ。
「大山君、君はとんでもないことをやったぞ。『かっぱえびせん』の味を変えるのであれば本社の了解をもらわんといかんぞ」
カルビーにおいて、「かっぱえびせん」は侵すことが許されない聖域の味。カルビーの社員なら誰もが胸に刻んでいるこの不文律を大山氏は知らなかった。中途入社組だったからだ。
まさにこれって老舗企業にありがちなエピソードだと思います。
このエピソードに興味がある方は下記の記事に詳しく書いてあります。
■「かっぱえびせん」の聖域に踏み込んだ男
IT技術と老舗製造業が持っている良さの掛け合わせが製造業を復活させるかも?
特に製造業は「商品(モノ)を作ること」が本業なので、どうしても「今までの歴史」に捕らわれがちです。
しかし変化の速い現代では「過去の成功体験」に縛られたことで、時代に取り残された会社が多くあります。
そして石井食品のように創業から75年も経てば、経営者も代替わりします。
石井智康氏のように、現代のIT技術と老舗企業が持っている良さを掛け合わせが出来ると現代のニーズにマッチした新しい体質の老舗製造業に生まれ変わることができるのかもしれませんね。
自社の取り組みを情報発信することでファンが増える
このような石井食品の会社の変化を見ると「久々にイシイのミートボールを食べたいなぁ」と思います。
こういう情報発信を行うことで、記事を読んだ人が会社や商品の良さを知ってファン化するというメリットもあるのだと思います。
ということで僕も今日はイシイのミートボールを食べてみようかな、なんて思ってます。
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