最近のシステム開発では『アジャイル開発』という言葉をよく耳にしますね。
こんにちは! 松田軽太です。
なぜ今、『アジャイル開発』が話題になっているのでしょうか?
ということで今回はアジャイル開発について考えてみたいと思います。
なぜウォーターフォール開発ではなくアジャイル開発が脚光を浴びているのか
アジャイル開発は小さく素早くシステムを作っていく開発手法です。
反対語はウォーターフォール開発になります。
従来のシステム開発は上流工程と言われる設計から下流工程と言われる実装へと流れていきます。
その様子が水が上から下に落ちる様子に似ているので、ウォーターフォールと呼ばれています。
ではなぜウォーターフォール型開発ではなくアジャイル開発が脚光を浴びているのでしょうか?
ざっくり言ってしまうと「ビジネス環境の変化が早すぎて従来型のウォーターフォール開発では間に合わない」ということです。
従来型のウォーターフォール型開発は
①要件定義→②基本設計→③詳細設計→④プログラム製造→⑤単体テスト→⑥総合テストという工程を経て⑦本番運用になります。
こうして見ると本番運用までの道のりが長~いですよね。
ウォーターフォール型開発ではプロジェクトの期間が1年~2年と長いスパンになることが多いのです。
その方法はまるで「建築物を建てる」ような感じに似ているのです。
まず住む人の要望を聞きながら間取りや必要な設備を決めて、設計図を書き、コンクリートの下地を作り柱を立てて・・・といった具合です。
なのでウォーターフォール型開発が向いているのは「明確にどういう使い方をしたいのか?が決まってる開発」です。
例えば在庫管理システムや売上・請求管理システムや購買管理システムのようにどこの会社でも同じように行っているような業務システムを構築する場合は、目的が明確なのでウォーターフォール型開発が向いています。
あらかじめ設計図が出来ているので、納期に合わせて必要な人数を投入できるので人界戦術が可能なのです。
では「これから新しいビジネスを始めるので、要件が決まってない」という場合、ウォーターフォール型開発は可能でしょうか?
使う側が「何をしないのか?どう使いたいのか?」が明確になっていない段階で「たぶんこういう使い方をするだろう」という予測でむりやり設計図を書いて、業務システムを作っていくことになります。
もうお分かりだと思いますが、こういうシステムは実際に運用し始めてから「こういうことじゃないんだよな・・・」と気がつくことになります。
つまりウォーターフォール型開発は「まだ決まっていないこと」を業務システム化するには適していない開発方法なのです。
こういう「あいまいな状態」からの開発はアジャイル開発が向いています。
分かりやすい事例では「新型コロナウィスル対応のシステム開発」です。
ほんの数ヶ月間前にはじまった「新型コロナウィスル」という未知のウィスルに対策するためのシステム開発では要件なんか決まりません。
こういう場合は少しづつ小さなシステムを作りながら、徐々に拡張していくしかありません。
このように「小さく作って、大きく育てる」というシステム構築は圧倒的にアジャイル開発が向いているのです。
カインズでのアジャイル開発の事例
日経コンピューター 2020年6月25日号では、こんな見出しの記事が掲載されています。
『カインズ、怒濤のデジタル攻勢 次世代小売りはフル内製組織が創る』
日経コンピュータ 2020年6月25日号 | 日経クロステック(xTECH)
では、かいつまんで説明しましょう。
ホームセンター大手のカインズでは、ウィズコロナ時代の新しいサービスとして「CAINZ PickUp(カインズピックアップ)」という取り置きサービスを開始したのです。
サイトの説明文にもあるように『CAINZ PickUp(カインズピックアップ)とは
店舗やオンラインショップの商品を取り置きでき、ご希望のお店で受け取れるサービス』なのです。
このサービスのポイントは「新型コロナウィスル時代の買い物として、感染防止のために極力、他人と接触するリスクのある買い物を短時間で済ませることができる」という部分でしょう。
事前にスマホで商品を購入したら、お店に行って、さっと受け取って帰ることができるのです。
コロナ禍前の買い物は「お客を店内に回遊させて、当初の買い物以外の商品もついでに買ってもらう」というものでしたが、他人との接触が感染リスクとなるコロナ禍の社会では、このような従来のビジネスの在り方が通用しなくなってしまったのですから。
カインズはこの他にも店舗の在庫数や置き場所をお客がスマホで分かるようなサービスも展開しています。
このようなサービスを短期間で運用できるようにするために、カインズではデジタル戦略本部用の拠点として「CAINZ INNOVATION HUB(カインズイノベーションハブ)」を東京都心の表参道に開設しました。
カインズのデジタル戦略本部は外部からIT人材を集めて100人超の組織となっています。
その目的は『アジャイル開発でITシステムを内製できる組織』を構築することにあるのです。
デジタル戦略本部が出来る前は、SIerに開発を依頼していましたが、要件定義だけで6ヶ月を有していました。
しかし、新型コロナウィスル対応として立ち上げるサービスに、要件定義で6ヶ月もかけていたら本番稼働するまでに1年近くかかってしまうことでしょう。
それでは遅すぎますよね?
なのでカインズは自前でシステム構築するための人材を外部から集めて内製化できるようにしたのです。
実はカインズが目指しているのは『IT小売業』なのです。
時代はあらゆる業界がソフトウェア・ファーストを目指す
こうした動きはカインズだけに限りません。
大企業ではパナソニックが『モノを作らぬメーカー』への舵を切っています。
家電メーカーの巨人であるパナソニックの社長の口から「今のままでは10年もたない」という衝撃的な言葉が発せられたのです。
従来型の買い切り型の商品ではなくて、ソフトウェアを更新することで進化する商品が望まれているのです。
そう、テスラの販売する電気自動車のように。
その危機感は自動車大手のトヨタでも同じです。
製造業の経営者自身が「もう今までのようにモノを作って売り切る商売では、世界では戦えない」という危機感を持っているのです。
このような不確実な世の中で、従来型のウォーターフォール型開発は成立すると思いますか?
どう考えても無理ですよね?
アジャイル開発はVUCAのような不確実な時代が求めたシステム開発の方法なのです。
よく「アジャイル開発は企業の文化」とも言われます。
単なるシステム開発手法にとどまらず、ビジネスの在り方まで作りかえるパワーを秘めているのです。
アジャイルとは「先の見えない時代に対して、企業がビジネススタイルそのものを柔軟に変革する」ということなのだと思います。
どんな本を読めば良いのか?
とはいえ、漠然として掴み所のないフワフワした話だと思いますので、オススメの本をご紹介します。
まずはアジャイル開発を理解したいということであれば、この本を読むと良いでしょう。
デジタル・トランスフォーメーションについての考え方はこちらの本がオススメです。
ソフトウェア・ファーストといえばこの本でしょう。