会社の中での情シス部門への大きな誤解は「情シスの人は何でも知っているに違いない」という過大評価ではないでしょうか?
こんにちは! 松田軽太です。
よくあるのは総務部が導入したFAX複合機の操作説明の役割が、なぜかいつの間にかに情シスがやることになっている、というエピソードですね。
これはもうほとんどの情シス部門が「そうそう!」と10回くらいブンブン頷いていると確信します。
どこの会社の情シス部門も似たようなものですが、コンセントがある道具の使い方は9割くらい情シスに来ると思っておいた方が良いでしょう。
さて、そんな「電気を使う道具の何でも相談窓口」扱いの情シスですが、意外に思うかもしれませんが、けっこうな割合でExcelの使い方には詳しくなかったりします。
Excelの関数でいえばSUMUIFやCOUNTIFのようなExcel中級者では使えて当たり前の関数を知らなかったりします。
実際に僕が出会った大手SIerのプロジェクト・マネージャーはピボットテーブルなんか使ったことがないと言ってましたしね。
普段からExcelを使いこなしている人からすると「え?情シスの人なのに、SUMUIFも知らないの??ダッセー」と感じるかもしれません。
なぜこんなことになるのでしょうか?
だって情シスの人ってExcelでの集計作業なんて日常的に行わないからです。
前述した大手SIerのプロジェクト・マネージャーはピボットテーブルは知らないけど、クロス集計したければ、自分でプログラムを組んでしまうと言ってました。
なので「なぜ情シスの人なのに、自分よりもExcelを使いこなせてないの?」という問いの答えは「そこまでExcelに依存していないから」ということになります。
経理や総務のように日常的に集計表を作る部門の人の方が、情シス部門よりも集計技術を向上させる必要性が高いと言えます。
情シスがExcelの関数を使いこなせた方が良い理由
とはいえ、それでもやはり、これからは情シス部門のスタッフもメジャーなExcelの6大関数くらいは使えた方が良いでしょう。
それは何故かというと働き方改革で業務効率化が求められたとき、まずはExcel関数でなんとかするのがてっとり早いからです。
なぜExcel関数でなんとするのがてっとり早いのかというと、例えば基幹システムで管理を行っていない業務を新たに基幹システムで行おうと思ったら、機能追加のカスタマイズが必要になります。
多くの企業ではパッケージやERPなど、自社で内製していない業務システムを導入していることでしょう。
その場合、ちょっとした機能の追加でも費用が掛かります。
聞いた話ではありますが、超メジャーな海外製ERPに一個、ボタンを追加したら3百万円も請求されたと聞きます。
まぁ、この例は極端かもしれませんが、それくらいパッケージソフトやERPに新たになカスタマイズを行うというのはお金のかかることなのです。
ましてや要件定義から実装するとなると安くても数百万円、高ければ数千万円なんてザラにします。
では業務に話を移しましょう。
会社には1部門だけで行っている業務ってたくさんありますね。
そういう業務はほとんどの場合、情報化投資する予算なんて貰えませんよね?
ましてやこの先の見通しが立たないコロナ禍の時代では、情報化投資は削られることはあっても、増えることはなかなかないでしょう。
そうなると費用を掛けずに業務を効率化するしかありません。
業務部門の中にITの素養がある人がいれば、自分で関数を駆使して業務改善を進めてくれますが、そんな人材は100人に1人程度ではないでしょうか?
ほとんど奇跡の近い確立です。
業務部門自身で業務改善をできないのであれば、情シスが手伝うことになりますよね。
そこでExcel関数の関数を活用するのです。
Excelの関数であれば、カスタマイズ費用は掛かりませんからね。
Excelは学習コストが安いのでコスパが良い
情シス部門のスタッフがExcel関数を習得するメリットは市販の本や山ほどあって学習コストが安いのに、それでいて改善効果が絶大なので、業務部門から信頼してもらえるという部分です。
一般的に業務部門の情シスに対するイメージは「何か相談してもすぐに費用が掛かる、とかセキュリティ的にそれは無理とか、すぐに断る理由ばかり並べ立てる」という悪い印象があります。
もちろん情シスの第一の使命は、今、運用している業務システムを安定稼働させることなので「おいおい、そんな業務部門からの相談なんか乗っているヒマなんかなんだよ!そんなの自分たちで勝手になんとかしてくれっるーの!」という声が聞こえてくるのは分かります。
そして最近の業務システムはパッケージやERPを導入しているので、情シス部門はベンダーコントロールという名のSIerからの見積もりを叩いて値引きさせるような仕事がほとんどだという会社もあるでしょう。
業務システムの内製化を手放した情シス部門は自分で開発するノウハウも消失していているので、どうやってシステム開発すれば良いのか分からないのです。
しかし、そういう事情を知らない業務部門は「相談しても何にも協力してくれないし、いつも仕事の邪魔をするだけだ」という悪い印象になってしまうのです。
なのでそういう悪口を言われないようにするためには、たいして手間がかからないのに、効果が絶大なExcelの使い方を覚えてしまうのがてっとり早いのです。
まずはExcel6大関数を習得する
とはいえExcelの関数は400種類くらいあるので「何から手を付ければいいのか
分からない」と戸惑うかもしれませんね。
まずはちまたで「Excel6大関数」と呼ばれている関数を覚えましょう。
・IF関数 ⇒ 条件によって値を変える
・VLOOKUP関数 ⇒ 商品名や単価を自動でセットしたい
・COUNTA関数 ⇒ 空白以外のセルの数を数える
・COUNTIFS関数 ⇒ 複数の条件でも数を数えられる
・SUM関数 ⇒ 今月の売上げを計算する
・SUMIFS関数 ⇒ 複数の集計条件があっても集計できる
この6つの関数を使えるようになれば、業務部門での業務効率化を実現できるようになります。
これらの業務改善の具体的な事例は、こちらの記事で紹介していますので、そちらを読んでみてください。
SUMIFS関数を使って日々の集計作業を爆速にする方法 【Excel初心者向け】 - 松田軽太のブロぐる
Excelの定番本は下記になるので、まずはこの本を読んでみてください。
Excelの活用にデータベース的な発想を取り入れる
そしてExcel運用で大事な考え方は「データベースファーストの法則」です。
これはすごい改善社の吉田拳氏が提唱しているのですが、上記の6大関数を
効果的に使う考え方です。
とはいえデータベースの構築自体をSIerに丸投げしていたら、どういうことなのか分からないですよね。
Excelでの定型処理をラクチンにする「データベースファーストの原則」の基本的な考え方は
・トランザクション(集計元データ)
・マスタ(集計基準となる情報)
・サマリー(集計)
・フォーム(印刷レイアウト)
の4つの要素に分けてExcelのシートを構成するというものです。
データベース的な考え方はこちらの記事に詳しく書いてありますので、興味があれば読んでみてください。
Excelをベースにしてデータベースという考え方を理解するのに最適な本があります。
パワーピボットというモダンExcelと呼ばれている機能の解説本ですが、全部読まなくても、前半を読むだけで十分、役に立ちます。
というか、ここまで分かりやすくデータベース構築の考え方を丁寧に教えてくれる本ってなかなかないですよ。
業務を自動化することでさらに効率化を進める
6大関数を絶妙に組合せれば、かなりの効率化ができるとは思いますが、Excel関数の効果が絶大だとは言っても、限界はあります。
次に効率化をするのであればExcel-VBAやRPAを活用した業務の自動化に
なるでしょう。
Excel-VBAといえば、業務属人化の温床の代名詞であり、人事異動や退職で
誰もメンテできなくなったExcelマクロの面倒を見たりして、情シス部門でも
手を焼いているかもしれませんね。
この辺り、賛否があるのは承知していますがExcel-VBAを活用する最大のメリットは
どのパソコンにも開発環境と実行環境がほぼ用意されているという点につきます。
事務作業の8割近くはExcelを使って集計したり、なにがしかの書類を作成すること
でしょう。
それであればExcel-VBAを有効活用すれば、かなり業務自動化で作業効率が上がります。
他の誰かが書いたVBAは読みにくいかもしれませんが、アナタが自分で書いてしまえばメンテナンスは問題ないでしょう。
「そうは言ってもねぇ、プログラムなんか組んだことないんだよ・・・」という人も居ると思います。その場合はまずは「たった1秒で仕事が片づく Excel自動化の教科書」を読んでみると良いでしょう。
これを読んでもっとVBAのことを知りたいと思ったら、下記の本を読んでみると良いかと思います。
ペースレイヤリング戦略という考え方
ガトーナー社の提唱するペースレイヤリング戦略という考え方があります。
ガートナーが提唱する「ペースレイヤリング」とは、業務アプリケーションをユーザーの使用状況と変更頻度(ペース)で分類し、異なるガバナンスのプロセスを確立する新しい方法論である。ガートナーはアプリケーションを分類するにあたり、三つの層(レイヤー)を定義した。
(1)記録システム
中核的なトランザクション処理を担い、企業の重要なマスターデータを管理する。変更のペースは遅い。(2)差別化システム
企業固有のプロセスや業界固有の機能を実現するアプリケーション。ライフサイクルは1~3年程度だが、頻繁に変更・強化して変化に対応する必要がある。(3)革新システム
新たなビジネス要件や機会に対処するために特別に構築される新規アプリケーション。ライフサイクルは12カ月未満と短い。
このように3つに分けて考えますが、1の記録システムとはパッケージやERPなどの基幹業務システムのことです。メインフレームで内製している基幹システムもこの仲間になります。
実はこれからの時代に重要になるのは2つ目の差別化システムです。
これはその会社独自の業務のことで、パッケージやERPなどのアリモノのシステムには実装されていません。
なので、多くの会社ではこの部分は担当部署の中でAccessだったりExcelだったりでなんとか頑張っています。
しかし実際にはこの部分が同業他社との差別化されている部分で、企業の競争力に大きな影響を与える部分なのです。
重要だとは言いつつも、先ほど言ったようにパッケージやERPにカスタマイズして機能追加するには、費用対効果が見合わないという理由で、ある意味放置されていた部分でもあります。
しかも変更も多いから、なおさらです。
おそらく情シス部門でも薄々は「苦労はしているんだろうな」と思いつつも、予算も手段もないから見て見ぬフリをして、敢えて火中の栗を拾うようなことはしなかったのでなかったでしょうか?
でも、ここに他社との差別化を図る大事な業務があると考えたらどうでしょう?
そうなのです。
これからの熾烈な競争に打ち勝つには、この部分を業務を支援してあげる必要があるのです。
そうは言っても、今すぐにパッケージやERPにカスタマイズで機能強化ができるかというと、効果も分からない部分に情報化投資なんかしてもらえませんよね?
そこでまずは試作的にExcel関数やExcel-VBAで業務の効率化を実現し、効果を可視化するのです。
では、可視化したことで「効果がありそうだ」と判断したら、SIerに発注してパッケージやERPにカスタマイズを行えばよいのでしょうか?
もし可能であれば、情シス部門がローコード開発ツールを活用して業務システムを素早く内製化してあげると良いでしょう。
アジャイル開発というヤツですね。
SIerに依頼するということは要件定義や見積もり依頼に時間が掛かかりすぎるし、費用も高額になります。
業務部門の仕事内容こそ、取引先や商品戦略によって業務が大きく変化するので、アジャイル開発がベストマッチするはずです。
情シスの信頼感が上がれば、いろいろな協力してくれる
と、こんな感じで情シスが業務部門から信頼を得るためのExcel活用方法を書いてきましたが結局のところ、必要なのは情シスと業務部門との信頼関係の構築が大事だと
いうことです。
それが構築できれば、お互いに協力しあえるでしょうから職場の改善がしやすくなります。
同じ仲間同士なのだから、いがみ合って仕事をするよりは協力しあってスムーズに仕事をすすめたいものですね。