2021年3月の大ニュースといえばPADの無償化でしょう。
PADとはマイクロソフトの開発するRPAツールでPower Automate Desktopの略称です。
さすがに毎回「Power Automate Desktop」って書くもの大変ですしね!
PADは従来も有償サービスとして提供されてはいましたが、それが無償で利用できるようになったのです。
無償とはいっても利用できる範囲はあって、パソコン単体での利用になります。
しかし今まで有償だったツールが無償になったのですから、使わない手はありません。
ということでTwitterの情シス界隈では、PAD祭りの様相を呈しました。
何故ならこれによってRPA導入のハードルが劇的に下がったからに他なりません。
RPA担当者は貧乏くじを引いたみたいな扱いが多い
RPAは「システムエンジニアに頼らずとも業務を自動化できる」ということで2017年あたりに最初のブームを巻き起こしました。
しかし3年くらいを経て「どうやら『誰でもできる』は言い過ぎ」でした・・・。
そして現在は「RPAはノーコードで開発できるので、一般的なプログラミング言語にくらべれば敷居が低いのは間違いない」という評価を落ち着いたといったところでしょう。
今では多くの大企業でのRPA導入は進み、今後は中小企業への導入が進むだろう、と言われていました。
・・・が、なかなか進みませんでした。
それは何故でしょうか?
一番大きな理由は大企業のようにRPA専属部隊を設けることが中小企業では難しく、RPA導入するとなると今までの業務に加えて兼務で行うという苦行を強いられるからでしょう。
たとえば上司から
「そういえば松田君はExcel関数が得意だったな。会社として働き方改革をすすめる為に、RPAとかいうソフトをまずは経理と総務で導入することになった。会社方針としての取り組みだから断るワケにもいかん。そこで松田君に頼みがある。
RPAというのを使って業務効率を上げて欲しいんだ。なぁ~に得意なExcel関数みたいなものだろう」
・・・と、こんな感じで気軽に丸投げされたりしますよね。
こういう場合に手を挙げてしまうと、RPA担当というひとりぼっちのカイゼン・ジャーニーに旅立つことになります。
そしてRPA担当となって仕事は増えたとしても、たいていの場合、給与は上がりません。
なぜなら、まだRPA導入の成果が出ていない状態だからです。
そもそもPoC(実証実験)をするにも費用を出してもらえない
スモールスタートで何かを始めるというのは、PoC(実証実験)であることが多いでしょう。
(まぁ、効果がよく分からないから特定の部門だけを絞ったスモールスタートになるワケですが)
大企業であればDX推進室とかいろいろな名目で、トップダウンで実証実験をさせてもらえるかもしれませんが、中小企業ではそうはいきません。
費用を出すのであれば、なにがしかの成果を求められます。
従来のRPAを導入するのあれば、スモールスタートでも数十万円かかります。
しかも買い切り型でのサービス提供ではないので、毎年費用が掛かるワケです。
となると「RPAというのを導入したら、何人、削減できるんだ?」という話になってきます。
事務作業をいくら効率化したところで、利益を生み出せるワケではないからです。
最初はせいぜい作業時間が1~2時間減ったとか、その程度になるでしょう。
その程度の効果を出すために年間で数十万円の予算を獲得できるとは到底、思えません。
大企業からすればわずか数十万円なのですが、中小企業では役に立つのか役に立たないのはよく分からないモノにはなかなかお金を出してはくれないのです。
PADが無償化される意義
さて、ここまでの話でPADが無償化される意義が分かったかと思います。
今までPoC(実証実験)であっても費用が掛かるRPAを、まずは無料で使えるという意義は非常に大きいと思います。
中小企業では最初はRPAを利用できる範囲も限定的になるでしょう。
よくRPAベンダーは「RPAはデジタル従業員だ。従業員を月10万円程度で雇えるなら安いものだ。しかも労働時間は24時間大丈夫!」と売り込んできます。
理屈はそうですが、それはRPAがキチンと機能してからになります。
いくらノーコードだからといって、実務で役立つRPAのシナリオを作るには、それなりに手間がかかります。
(キチンとエラー処理を施しておかないと、突然、動かなくなりますから)
つまり10万円で雇ったデジタル労働者は最初は10万円以下の仕事しか出来ないのです。
それがPADの無償化によって「まずはパソコン単体でPRAを使ってみよう」と気軽に使えるようになるワケです。
もしPADで物足りないと感じたのであれば、BPなどのサーバー型を導入するというステップアップが可能となります。
PADの情報はどこで集めれば良いのか?
とはいえExcelと違って、まだまだPADについての書籍は充実しているとはいえない状況です。
なので情報を集めるのに苦労することになるでしょう。
ということでPADに関する情報が手に入る場所を紹介します。
動画だとこちらのサイトにまとめられています。
3月11日に開催された「緊急開催!Windows 10なら無料で出来るPower Automate Desktop勉強会!」の模様はこちらで視聴できます。
このイベント、なんと2300人もの申し込みがありました。
PADについて個別に相談したいということであれば、ASAHI Accounting Robot 研究所が頼りになる味方です。
PADの前身となるWinAutomationの時代からRPAを支援している会社です。
こちらも長いので通称「ロボ研」と呼ばれています。
ロボ研のnoteもありますので、最初の入り口としてはこちらの方が敷居が低いかな。
ロボ研さんは中小企業でRPA導入をすすめるための書籍も出しています。
ちなみに僕が買ったPADの書籍は「Power Automate Desktop 入門」です。
500円とお手頃価格なので「まずはPADってどんなものだろう?」と思った人にはちょうど良いかと思います。
こちらの本はExcelパワークエリ本の著者である鷹尾さんがご紹介してくださいました。
PADが話題ですが、こちらの電子書籍を購入しました。半分くらいデモをやりましたが基礎を体験するのにとても良い教材だと思います。レイアウトはパワーポイントのようですがiPadで十分読めます。
— Akira Takao (@modernexcel7) 2021年3月11日
Power Automate Desktop 入門 河原 伸一 https://t.co/D6NqO0T6lf @amazonJPより
PADは情シスにとっても強い味方になるハズ
RPAというと事務作業者が自分の仕事を自分で自動化するツールという印象が強いですが、情シス部門にとっても強い味方になるでしょう。
ローコードツールのなので慣れれば生産性が非常に高くなります。
なので、目先のめんどくさい業務をとりあえず自動化するにはうってつけでしょう。
そしてPADで自動化したあとで、本当の意味で業務改善や行う時間を作り出すのです。
何故なら業務改善するには、実務担当者にも意見やアイデアを出してもらう必要がありますが、実務作業者が忙しすぎては、改善するための打ち合わせもできませんから。
そうそう「ひとり情シスのためのRPA導入ガイド」という本もあります。
この本はRPAだけではなく「ひとり情シスの在り方」というテーマにも触れており、まさにひとり情シスの応援してくれる本です。
ちなみにこの本で扱っているのはUiPathというRPAツールですが、その部分をPADに置き換えて考えてみると良いでしょう。
この本の福田敏博氏はRPA導入コンサルもされていますので、Twitterからご相談してみても良いかも?
ということで無償で始められるRPAツールのPADをご紹介しました。
せっかく使える便利な道具が増えたのですから、使い倒して日々の仕事を楽ちんにしたいですね!