世間ではDXブームですが、システム開発経験がないのにDX推進室に配属されて「さて、どうしよう・・・」と戸惑っている人もいるのではないでしょうか?
こんにちは! 松田軽太です。
というワケで今回は、そんな風に困っている人に向けて書かれている本をご紹介します。
先日、ソシム社様から『エンジニアじゃない人が 欲しいシステムを手に入れるためにすべきこと』を献本いただきました。
この本は今までシステム構築経験が無いにもかかわらず、システム構築に携わることになってしまった人向けにシステム構築をする方法が丁寧に説明されています。
最近ではある日、DX推進室に所属することになってしまったけど、システム構築経験があるわけでもなく、ITベンダーとどのように付き合えばいいのかなど分からずに途方に暮れている人もいると思います。
そんな人にとってはこの本は強い味方になるでしょう。
内容は小説形式で書かれています。
営業部門に所属していた主人公がDX室に異動になり困ったという状況から始まります。
なので、まるで当事者になったかのようにリアルに疑似体験ができるように工夫されています。
第三章の「要件定義への関わり方」は要件定義の重要性が描かれています。
システム開発の未経験の人でも理解しやすく書かれているので、初心者の人にこそ読んでもらいたい本です。
システム開発という仕事は、それまでITに関わったことのない人のとっては未知の世界ともいえるでしょう。
今まで聞いたこともないワケの分からないカタカナ用語が羅列され、まだ存在しない動いていないシステムを想像しながら、業務にマッチしているのか考えなければなりません。
従来の情報システムは在庫管理や販売管理といったような業務をデータで管理することです。
一般的にSoRと言われ、正確に情報を記録するためのシステムです。
一方、DXというのはデジタル技術を活用して新しいビジネス価値を提供することで、SoEと言われます。競争領域をシステム化することで、独自性が強くパッケージソフトのような既製品はありません。
なのでDXというのはそのシステムを使う人たちでなければ、どんなシステムであれば役立たせることができるのか分かりません。しかしシステムを使う人たちはシステムを作ったことが無いので、ついつい他人任せになってしまいがちです。
システム開発や要件定義について書かれた本の多くはエンジニア向けなので、ある日、突然、営業からDX推進室に異動なった人が手に取った読んだところで何が書いてあるか理解できるとは思えません。
そのようなシステム開発迷子になった人たちに「どうすればシステム構築することができるのか」を教えてくれることが本書の素晴らしい価値なのです。
第4章の「プロジェクト計画の作り方」以降もとても中身が濃いです。
この章以降ではいわゆる失敗プロジェクトがなぜ起こるのか?を疑似体験できます。
システム開発経験のある人であれば「この状況だと死亡フラグ立つわ!」とハラハラすると思います。
そしてまだシステム開発を経験されてない人には、こういうプロジェクト体制だと計画が崩れさっていくのだと気がつけます。
システム開発は計画通りにすんなりいかないことも多いものです。
その辺りの理由を知ることができるので、とても参考になると思います。
経産省に発表した「DX-2025年の崖」をキッカケにいろんな企業が基幹システムの刷新に取り組んでいます。
具体的にはSAPの保守終了に伴うERPの移行や、富士通のメインフレーム撤退によるシステム再構築です。
しかし全てが成功しているワケでもないのは昨今、新システム移行後のトラブルにより商品が出荷できなくなったことで大きなニュースになっていたります。
情シス部門で過去に基幹システム再構築を経験している人は「基幹システムの再構築っ
て、簡単な作業じゃないぞ」と経験で分かっていると思いますが、そのような経験を持っていない情シス以外の部門の人は、その大変さを想像できません。
「だって今あるシステムを似たようなことを新システムでも出来るようにするだけでしょ?答えがあるんだから簡単じゃん」とスマホの乗り換えのような感覚で捉えている人も少なからずいます。
そういう人は自分の部署で使う機能しか知らないので、基幹システム全体でデータの整合をとる必要があるなんて想像もしていません。
『エンジニアじゃない人が 欲しいシステムを手に入れるためにすべきこと』という本はそういう人にこそ、読んでみるとシステム開発の現実を知ることができると思います。
細川先生の書籍は以前にも『システムを「外注」するときに読む本』を紹介したことがあります。
こちらも読まれてみると参考になると思います。
ITベンダーへ提示する資料の作り方を知りたいという人は『システム作らせる技術』という本を読まれてみると良いと思います。
RFPというシステムの要求定義書の具体的な書き方が非常に丁寧に説明されています。
これらの本に共通するテーマは「システムは作りたい側が積極的にならなければ、使って便利なシステムは作れない」ということです。
よくある会話は「俺らはITやシステム開発の素人なんだから、プロに任せればイイ感じに作ってくれるだろう」という無責任に楽観的な希望的観測です。
ITベンダーはシステム開発のプロかもしれませんが、個別の会社の細かい業務までは知りません。業務を知らない人に「イイ感じに作って」と言ったところで、自社に最適化されたシステムなんて作れるハズがありません。
基幹システムは長く使うものです。なので使う人が積極的に関与しなければ使いやすいシステムは作れないのだという認識を持つことが大切なのです。