自治体の枠を超えた「戦略」の集大成。山形県南陽市の生成AIプロンプト集から学ぶこと
山形県南陽市が公開した「生成AI活用実例集(プロンプト集)」をご存知でしょうか。
全748例という圧倒的なボリュームもさることながら、その中身を精査すると、単なる「便利な使い方の紹介」に留まらない、極めて高度な業務設計の思想が見えてきます。
Twitter(現X)でつぶやいたところ、大きな反響がありました。
山形県南陽市が公開してる「生成AI活用実例集(プロンプト集)748例」、正直自治体の域を超えてるなと思ってしまった。
— 松田軽太【ほぼ公式】 JTCオジサン図鑑×ゆるフワ系DX (@matudakta) 2026年2月14日
ただの「便利ツール紹介」じゃなくて、ECRS(排除・結合・交換・簡素化)を使った業務仕分けとか、BPRレベルのワークフロー再設計プロンプトが普通に並んでる。…
人口約3万人という規模の自治体が、これほどまでに解像度の高いAI活用を実践しているという事実は、多くのビジネスパーソンや組織運営者にとって、大きな示唆に富んでいます。
1. 業務改善の王道「ECRS」を組み込んだ設計
この実例集が特異なのは、プロンプトの前提にECRS(排除・結合・交換・簡素化)の視点が組み込まれている点です。
通常、AI導入といえば「今の作業をAIで早く終わらせる」という「効率化」の議論に終始しがちです。しかし、南陽市の事例では、まず「その業務自体が必要か(排除)」、「フローを組み替えられないか(交換)」といった、BPR(業務プロセス再設計)レベルの問い立てがなされています。
「AIを使うこと」を目的化せず、組織全体のワークフローを最適化するための「思考のパートナー」としてAIを定義している。この地に足のついた戦略的な姿勢には、正直驚かされました。
2. 現場の課題を解きほぐす「127番から420番」のプロセス
特に注目したいのが、127番の「業務プロセスの整理と企画書構築」から420番の「ワークフロー可視化」に至るまでの一連の流れです。
ここには、現場の職員が日々直面する「言語化しにくい泥臭い課題」を、いかにして構造化するかという知恵が詰まっています。
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情報の構造化: 散在する事務情報を整理し、論理的な企画書へ昇華させる。
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プロセスの可視化: 属人化しがちなワークフローを客観的に図解・整理する。
こうした作業は、本来コンサルタントの領域に近いものですが、それを現場の職員がAIを使いこなして自律的に行おうとしています。これは「AIを戦略的に使う」という言葉の、最も誠実な実践例と言えるのではないでしょうか。
3. 小規模自治体が示した「知の活用」の可能性
人口3万人の市がこれほどまでの成果物を世に出したということは、組織の規模や予算の多寡が、必ずしもDXの成否を決めないことを証明しています。
必要なのは最新のシステム以上に、「現状をどう変えたいか」という明確な課題意識と、それをAIに問い続ける粘り強さである。南陽市の748例からは、そんな力強いメッセージが伝わってきます。
思わず感嘆してしまうほどの内容ですが、これは決して遠い世界の出来事ではありません。私たちの日常業務にも、この「問いの立て方」を応用できる場面が多々あるはずです。
結び:AI時代の「思考の指針」として
南陽市の「生成AI活用実例集」は、単なるプロンプトのサンプル集ではなく、「AI時代における働き方の設計図」です。
もし、日々の業務改善に限界を感じているのであれば、一度この資料を紐解いてみることをお勧めします。そこには、技術を魔法としてではなく、確かな「道具」として使いこなすためのヒントが溢れています。



