こんにちは!松田軽太です。
萩原博子さんの著書「生き返るマンション、死ぬマンション」を読んで感じたことの続きです。
- 作者: 荻原博子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2016/12/20
- メディア: 単行本
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さて僕は分譲マンションで理事長をしていた経験があるんですが、まぁ、理事長というのはエライ大変な作業でした。
日本の土地神話が崩壊して、マンションは一時的に住む場所から、終の住処と考える人が増えたわけで、僕もその中の一人です。なので特に住み変えたいとは思っていません。
では終の住処にするには何が必要か?というとマンションという資産の管理をキチンと行うということになります。
しかし「管理をキチンと」と言っても具体的にどういうことだろうか?と疑問が湧きますよね?
パッと思いつくのは
・清掃をキチンとすることで清潔感を保つ。
・定期的な修繕をして、建物の価値を保つ。
といったところだと思います。
しかし、もっと大胆なことを考えて、実践しているマンションが本書の中で紹介されていました。
京都の西京極大門ハイツというマンションが驚きの取り組みをしているのです。
築41年と決して新しいとはいえないそのマンションはなんと購入価格の1.5倍くらいの金額で中古物件が取り引きされているというから驚きです。
普通に考えたら築41年のマンションなんて買ったときの半額くらいになっているはずですから。
勿論、これはカラクリがあって、資産価値が落ちないような方策を管理組合が実施しているんですね。
築41年ということは、居住者の多くが年金生活だと思われます。
仮に30歳で買ったとしても41年で71歳になっています。
しかしこのマンションは自主管理をしています。通常は管理会社にお金を払って委託しますが、それを住民が自主的に行っているのです。
その甲斐あって、管理費は月額6000円程度とかなり安く、しかも管理費に余剰が発生したら、住民に対して管理費還付金ということで、払い戻ししているそうです。
それだけはなく、隣に立っていたスーパーが閉店すると知ると、管理組合が購入したというから驚きです。
購入したスーパーの建物を改装して、一階が食事もできるコミュニティスペースで、2階が子供向けの図書スペース、3階が居住者向けの宿泊施設にしたそうです。
しかも日曜喫茶ということで、住民以外の近隣住民も利用できるモーニング喫茶をわずか100円で提供しています。当然、原価販売なので利益はないけど、それによりマンション自体が人気を博し、資産価値の維持に繋がっているというカラクリなのです。
また2重サッシ化やペアガラス化を行うことで気密性や断熱性があがり、電気代も6割程度まで下がったのだそうです。こういう工事も管理組合で費用負担し、個人負担はないという徹底ぶり。
またマンションの修繕工事はすべてインターネットによる公募で行い、大きな工事会社では行っていません。
建築業界は元請け、下請け、孫受け、曾孫受けと改装構造になっており、実際のマンション工事を行う業者は曾孫受け業者なので、だったらはじめからそこに工事してもらえば良いという発想で、それによって修繕工事代が従来の7割程度で済んだといいます。
もっと驚いたのがマンションの給排水管交換工事の取り組みです。
マンションの給排水管は例外なく35年程度で劣化します。そのためマンションの建物寿命が70年だとしたら、1回は必ず配水管交換工事が必要になるのです。
しかし配管は全戸に繋がっているので、多くのマンションでは全戸一斉に交換工事を行います。
だが、ここで問題が起こるのです。
配管には共有部分と専有部分があります。専有部分とはトイレやお風呂やキッチンといった部屋の中の配管で、その専有部分は個人負担なので、修繕積立金には含まれていません。
また配管は部屋の床下や壁の中にあるので、交換するには一旦、床や壁をはがさなくてはいけません。ということは工事期間中、部屋に住めないということになるのです。
そこで多くのマンションで一悶着が起こるそうです。マンションは数十戸~数百戸と沢山の家族が澄んでいます。当然、各家庭で様々な事情があるわけです。そして工事費用は数十万円にも及ぶので「はいそうですか」と簡単に出せる金額ではありません。
しかも工事は築35年目です。大方の住人が年金生活になっているし、孫と同居していたら、受験の年だったりするので迷惑この上ないです。
ということで全戸一斉に工事をするということは全ての部屋に了承を得なくてはいけないので、その調整で数年掛かることもあるそうです。
そこで西京極大門ハイツは大胆な発想の転換を行いました。
管理組合が定める5年以内に各家庭の都合のいいときに工事してもらうこととしたのです。しかも各家庭に工事費として39万円を補助し、工事の内容がバラバラにならないように予め管理組合で工事仕様書を用意したそうです。
それであれば、工事業者ごとに工事内容がバラツクこともないし、各家庭の都合の良いタイミングで工事ができます。
そんな芸当ができるのも、修繕工事業者を自分たちで選定しているという経験の積み重ねなのでしょうね。
他にも太陽光発電を設置し、売電収入を得ていて、発電設備の設置費用も10年で回収できるということです。
多くのマンションが「資産は自分たちで守る」という意識がなかなかできません。
その理由は簡単で、管理会社に丸投げしているから、ノウハウが蓄積できないからです。
企業でも「業務をアウトソージング」というかけ声と共に、業者に丸投げして人件費を抑制したりしますよね。その結果、確かに短期的には黒字化しますが、それと引き替えに企業の中から業務知識が消失さてしまいます。しかし何事も消えてから後悔するのが人の世の常です。
まぁ、マンションの管理に至っては、最初から丸投げしているから何のノウハウも蓄積されないので失うものすら無いわけですが。
それでは業者のイイカモにしてくれと頼んでいるようなものです。
西京極大門ハイツまで自分たちで管理システムを作り上げるには多くの手間と時間が掛かると思いますが、素晴らしい事例を知ったので、少しでも取り入れることが出来ればいいなと思いました。