松田軽太のブロぐる

企業の情シスで働いています。会社の中では何をしてるのかナゾな職場の情シスあるあるなどや読んだ本のことなどを思いつくままに書いています。

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「システム内製化は言うほど簡単じゃない!」という話

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「これからの事業はデジタル技術が重要になる!」という認識が経営者に広まってDXブームになってますね。

 

こんにちは! 松田軽太です。

 

そして「激しい変化に対応するためにはシステム構築をタイムリーに開発する必要がある」ということでシステム内製化の必要性も高まりました。

 

だが、しかし。

 

それってそう簡単にはいかないと思ってこんなことをつぶやいてみました。

 

 

これ、どういうことかというと「今までITベンダーに丸投げしていた会社の情シス部門が「これからは内製化だ!」と経営陣から指示されたからといって、すぐに内製化なんかできないと思うのです。

 

システム内製化をするには、組織変革が必要


ってなワケで日経コンピュータの2021年10月14日号の特集記事「内製の極意 DX功者はゼロから組織を作る」の中に「内製化に取り組む大手企業の例」が載ってました。

 

エディオン:2018年から内製化を本格化。システム子会社を本体システム部門に転籍させて内製化できる体制を整える。

 

www.itmedia.co.jp

 

カインズ:2019年1月にデジタル部門を新設し、約10人だったデジタル担当をグループ企業からの異動や中途採用で100人にまで拡大した。

 

www.itmedia.co.jp




グロービズ:2016年からエンジニアの採用を始め、2021年にはエンジニア80人体制に。

 

japan.zdnet.com


セブン&アイ ホールディングス:2019年10月にエンジニア専門チームを立ち上げ、2021年6月までに160人のIT/DX人材を採用。

 

active.nikkeibp.co.jp

 


ファーストリテイリング:2014年にデジタル戦略強化の方針を打ち出す。最高2000万円の年収を打ち出し、優秀な人材の獲得を進める。

 

type.jp


星野リゾート:2018年から内製化に舵を切り2017年には10人だった情報システム部門を2021年には45人にまで拡大。

 

xtech.nikkei.com

 

良品計画:2021年9月に「EC・デジタルサービス部」を新設し、エンジニアを100人規模で募集する。

 

atmarkit.itmedia.co.jp

 

 

これらの大手企業のシステム内製化の事例を見ると、今まで社内には情報技術に詳しい人材が少なかったので社外から新たに大量の人材を募集しています。

 

この動きを見ると分かりますが「これからの変化が激しいビジネスに対応するには、システム開発も俊敏に行う必要がある。だから内製化しろ!」と命令するだけでは、システム内製化なんて土台、無理なんです。

 

まず今現在の情報システムの仕事内容を確認してみる


そうは言っても「そりゃ、大手と比べると数は少ないかもしれないが我が社にも情報システム部門がある。彼らに内製させればいいではないのか?」と首を傾げる人も居るかもしれません。

 

では、今現在の情報システム部門ってどんな作業内容なのか、具体的に分かっているでしょうか?

 

実際のところ、多くの会社の情報システム部門はITベンダーに開発を依頼していて、実際に自分でシステム構築をしたことがないではないでしょうか?


こんな事例があります。

xtech.nikkei.com

 

乱立した経緯を紐解くと、システム部門が基幹系システムの外部委託を過去30年にわたって進めてきたことが分かった。
その結果、システム部門は開発力を失い、利用部門の開発要請に機敏に応えられなくなっていた。

 

 利用部門から「この業務をシステム化できないか」「この事業アイデアをITでどう実現するか」といった相談を受けても、
外部委託に慣れたシステム部は費用や実現可能性をタイムリーに答えられない。
利用部門は「システム部門には頼れない。自分たちでやるしかない」と考え、EUCが進んだようだ。

 

これ、特殊な事例ではなくて、こういう実情の情報システム部門が多いと思うのです。

 

よく「情報システム部門は利益を生み出すことのないコストセンターだ」と揶揄されることがあります。そのためバブル崩壊に端を発する経済低迷の「失われた30年」の間に、情報システム部門は縮小の一途を辿っていきました。


その結果、「ひとり情シス」というワンオペが増えてしまい既存システムのお守りと「パソコン壊れた!」みたいな問い合わせのヘルプデスクで手一杯になってしまったのです。

 

最近は全従業員に対するシステム部門の人数割合は平均1%だと言われています。

つまり従業員100人だったら1人。1000人だったら10人です。

 

そんな状態の中で「これからはシステム内製化だ」と言われても、手が廻るワケがありません。

 

もし「え?情報システムってそんな状態なの?」と感じたのであれば、一度、情報システム部門のスタッフに実情を聞いてみると良いでしょう。

 

ローコード開発は人手不足を解消する救世主になるのか?

 

大手企業であれば「年収2000万円で募集」のような荒技を使えるでしょうが、果たして中小企業ではどうでしょう?

 

とくに創業から数十年経っている老舗企業であれば、他の部門との給与バランスが崩れるので、なかなかそんな例外規定を実現するのは難しいのが現実でしょう。

 

となると人手が確保できないなら、開発時間を短縮するしかないという話になります。

そこで脚光を浴びるのがローコード開発ツールです。

 

しかしローコード開発といっても、これもそう単純ではありません。

 

まったくシステム開発をしたことがない人が「さぁ、ローコード開発でバリバリ開発するぞ!」と意気込んでみたとして複雑な業務システムを作れるかというと、そんなことはありません。

 

「効率よく作れる」と「誰でも作れる」はまったく違うことなのです。

 

例えばローコード開発の代名詞となっているkintoneはどうでしょうか?

ツイッターではこんな現場の声を聞きました。


弊社でもkintone導入して「誰でも」アプリが作れる状態になってますが、データベースやいろんなことしっかり理解してから作らないと「やりたいことはわかるけどその構造では勿体ない」ってのができてしまいますね。
しかも本人はそれで満足してたりして。できてないことが何か知らないといけないのに。

 


そうです、業務システムを作るには最低限、データベースの知識が必要になるのです。


では、どういう状態であればローコード開発が効果を発揮するのでしょうか?
そのヒントはこちらの記事に書かれていると思います。

 

codezine.jp

 

ローコード開発の本質は、高い技術力と経験を持ったITプロフェッショナルが、ローコード開発ツールを活用することで、その力をより効率的に発揮し、ひとりでも多くのユーザに喜ばれるソフトウェアを高速に構築することが可能なことです。

 また、従来のソフトウェア開発と比較して、より低い学習コストで高度なソフトウェア開発を高速に開発できるようになったことから、これまでにはない新しいビジネスモデルでの事業も可能となります。

 

つまりデータベースの知識や業務システム構築の経験があるような基本的な知識・経験を持っている人が使うと効果絶大だということです。

 

ふたたび日経コンピュータの記事に戻ると、伊勢神宮の参道で食堂営んでいるゑびや大食堂がITツールを自社開発しDXを推進しています。

 

ではゑびや大食堂は大企業なのかというとそうではありません。

資本金500万円、従業員数50人という会社です。

 

つまりやる気があって人材があれば、システム内製化は可能なのです。

 

www.ise-ebiya.com

 

なんと専用サイトまで用意されて外販しているのです。

 

ebilab.jp


こちらの記事によると社長の小田島春樹氏は東京の大手IT企業に入社し、人事や新規事業開発を担当していたという経歴があるもの、IT活用が出来た理由の一つかもしれません。

 

www.mie-iot.com


ちなみに下記のURLから「伊勢の老舗食堂『ゑびや』が『EBILAB』に変化できた理由 ~ドッグフード文化が生み出すユーザー企業発のイノベーション~」という資料を閲覧できます。55ページもあるので読み応えがありますよ。

 

https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/smartsme/2019/190626smartsme04.pdf

 

こちらは中小企業庁のPDFですが、コンパクトにまとまっているので分かりやすいです。

https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/sapoin/monozukuri300sha/2018/seisan078_ebiya.pdf

システム内製化を実現するには経営側の意識改革が必要

 

これまでの事例を見ても分かるように、今までシステム内製化をしていた会社がDXブームに乗るように、いきなりシステム内製化だ!」と意気込んでも、途中で頓挫するのは明白でしょう。

 

社内での育成や外部からの人材獲得。社内人材を育成するには教育投資が必要ですし、外部から優秀なIT人材を獲得するには給与や労働環境の待遇改善も必要でしょう。

 

またDXによって既存の業務を変革する必要があるなら、トップダウンで改革を指示しなければ抵抗されてしまうに決まってます。

 

単純にローコード開発ツールを導入すれば開発するという話ではありません。

 

「システム内製化」というのは企業文化まで改革する大きな話なので、そう簡単には実現できないのです。

 


www.matudakta.com

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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