RPAという事務処理自動化ツールの登場により、情報システム部門に頼らずとも業務部門の担当者が自分自身で業務を自動化することができる時代になりました。
こんにちは! 松田軽太です。
RPAは自動記録やノーコードでロボットを作成できるので、プログラミング経験がない人でもとっつきやすいというのが最大のメリットと言えるでしょう。
とはいえRPAの普及に伴い『野良ロボット』という不吉な言葉も見かけるようになりました。
試しに「RPA 野良ロボット」でググってみると、沢山、野良ロボットについて書かれた記事が出てきます。
でもこれって「RPAだから起こる問題」ではありません。
安易にEUCに手を出した結果が野良アプリを量産する
実務者が自分自身で作業効率を上げる手段は、なにもRPAツールだけはありません。
EXCEL-VBA、ACCESS、WEBデータベースなどのローコード開発、グループウェアのNotesDBなどがあります。
いわゆるEUC(エンド・ユーザー・コンピューティング)が行われている職場では大昔から課題になっている話です。
でもそれはある意味、仕方がないともいえます。
あくまでもノンプログラマーが自分の業務をどうにか効率よくしたいという想いで
DIY的に自動化をしているのだから、ツールを使ってアプリを作ることだけに気がいってしまうので、稼働後の運用管理の方法までは思い至らないのでしょうから。
どんなモノでも同じだと思いますが、長く使い続けるためには日々のお手入れが大事なのです。
例えば自動車であれば定期点検や車検を受けるワケですよね。
アプリも同じように長く使い続けるためには運用管理する方法まで考える必要があるのです
RPAやローコード開発は魔法の杖ではない
RPAやローコード開発が普及することで、多くの人がEUCを経験する機会を得ることになります。
そしてRPAやローコード開発は多くのツールベンダーは「専門知識がなくても誰でも簡単に作れる」という夢のようなキャッチコピーで、セールスをかけているので「それなら自分の職場でもできるに違いない」と期待に夢を膨らませてRPAやローコード開発を導入するでしょう。
あたかも『魔法の杖』を手に入れたかのような錯覚をして・・・。
そしてその先に待っているのはご存じのように『期待外れの絶望感』です。
なぜ期待外れになるのかといえば、ろくに考えもせず「誰でも簡単に自動化できる」を
鵜呑みにして、ノリと勢いで導入してしまうと期待した効果が出なくて「おいおい・・・RPAってのは専門知識がなくても誰でも簡単に自動化できるっていうから、大枚はたいて導入したのに、話が違うぞ!」と勝手に幻滅してしまうのです。
世間に増えていく『しくじり先生』に気をつけよう
実は今回、取り上げたいテーマは「RPAを導入するならロボットをキチンと管理して野良ロボットを防止しましょう」ということではありません。
RPAやローコード開発にしても、これからますます種類が増えて低価格化していくでしょうから、実務部門が自分たちの手で業務システムを作成できるようになるので、業務システム開発の敷居が下がるのは良いことだと思います。
しかし適切な知識を持たずに勝手に『魔法の杖』だと妄想して、ろくな準備もせずに、とりあえずRPAやローコード開発を導入すると大失敗するのは当然の結末です。
そしてその結果として大量生産されるのは、野良ロボットや野良アプリだけではなく「しくじり先生」なのです。
これらの「しくじり先生」の多くは、ビジネス誌などの載っているRPAの成功導入事例を読んで、興奮しながら「この記事に書かれているのが本当なら、このRPAってのを導入すれば、数万時間の業務時間を削減できるくらい効果があるのか!ってことは余った派遣社員もクビ切りすることでコストダウンもできるし、そうなれば俺の業績評価も爆上がりになるぞ!」なんて甘い夢を見たことでしょう。
ところが「数万時間の業務時間を削減」を実現するのは、そう簡単ではありません。
業務棚卸をしたり自動化を定着化させるために実務者を説得したりするのに準備と工夫が必要なのです。
それらの準備を怠って勢いでRPAを導入しても『魔法の杖』ではないので「数万時間の業務時間を削減」という甘い果実は実るワケがありません。
さて、こうなった時、このRPA推進者はどうなるでしょう。
RPAの投資効果が得られずに上司からはボロカスに責められて落ち込み、転職することになるのではないでしょうか?
するとこの『RPAしくじり先生』は転職先の会社で、熱を込めて(多少、美化しながら)自分のRPA導入失敗談を話すでしょう。
実はこの「熱のこもった(多少、美化された)自分の経験談」がこれからRPAを導入しようとしている側にとって、厄介なクセ者なのです。
他人の失敗談には必要以上に説得力がある
『RPAしくじり先生』は転職先の会社では「これからRPAを導入して人手不足を補おう」と計画していたとします。
その会社はRPA未経験なので、この転職してきた『RPAしくじり先生』は貴重なRPA経験者に見えてしまいます。なので、きっとRPAの経験談を聞くでしょう。
するとこの『RPAしくじり先生』はなんと言うでしょうか?
「いや~、やめた方がいいですよ! RPAなんて導入しても、ロボットは途中で動かなくなるし、誰が作ったのか分からない野良ロボットは増えるし、逆にロボットの管理のために余計な手間が増えるだけでロクなことはないですよ!大枚はたいても、ドブに捨てるようなものです!」
・・・と、こんな感じで意気揚々とRPA導入失敗談を語るではないでしょうか。
そして話を聞く側からすると『RPAしくじり先生』の話は体験談だから妙に説得力があるのです。
その結果、きっとこの会社ではRPA導入計画を取りやめることになるでしょう。
でも、本当にそれでよいのでしょうか?
道具は適切に使わなければ便利にはならない
RPA業界では2019年から「幻滅期に入った」と言われています。
ということは幻滅した『RPAしくじり先生』も、たくさん生まれたと思ったほうがよいでしょう。
そして今はRPAの次の『魔法の杖』としてローコード開発がバズってます。
なんせ今まではローコード開発なんて名乗ってなかったツールがいつの間にかに
ローコード開発ツールだと名乗っているくらいですから。
となるといずれ『ローコード開発のしくじり先生』も増えていくのでしょう。
しかし、RPAもローコード開発も道具にすぎません。
そして道具は適切に使わなければ便利にはならないのです。
そのためには適切な道具を、適切に扱える人材を計画的に育てる必要があるのです。
これからRPAやローコード開発を導入してみようと考えている人は『しくじり先生』の
熱のこもった失敗談に惑わされないようにしましょう。
その失敗談はあくまでも一個人の経験談にすぎないのですから・・・。