皆さんの会社には情シス部門ってありますか?
こんにちは! 松田軽太です。
「情報システム部はコンピューターシステムの専門家なんだから、チャチャっと業務システムを作っちゃうんだろうな」とか思っちゃいますよね?
でも、現実は全然違ったりします。
業務システムを作れない情シスが実は多い理由
その昔、会社の業務システムはオフコンと呼ばれる企業向けの専用コンピューターで業務システムが作られていました。
パソコンではなくてオフコンです。
オフコンとはオフィスコンピューターの略です。
例えばIBMのAS400とかNECのExpress5800とかですかね。
昔の映画に出てくる白黒画面に緑色の文字のコンピューターを思い浮かべてもらえば分かりやすいでしょう。
IBM i(AS/400)の基本操作について(参考URL、キー操作、代表的なコマンド、コマンドの探し方)|e-bellnet.com(AS/400 技術情報サイト)
この記事では分かりやすくするためにオフコンという言葉で統一しますね。
溢れかえる野良COBOLによるブラックBOX化問題
さて、オフコンでの運用で多かったのはCOBOL言語というプログラム言語での業務システム開発でした。
COBOL言語とは今から70年くらい前に作られたプログラム言語で、今でも銀行や自治体などで使われ続けています。
オフコン運用時代の情シス部門は、このCOBOL言語を駆使して業務システム開発を社内で行っている会社が多かったのです。
つまりシステム開発の内製化ができていました。
しかし、昨今、問題視される野良Excelや野良ACCESSや野良ロボットと同じように、野良COBOLが溢れかえってしまったのです。
いわゆる属人化とブラックBOX化という問題です。
野良Excelくらいなら末端業務の一部分だけの影響で済みますが、販売システムや在庫管理システムや生産管理システムといった会社の事業の根幹を管理している基幹システムが属人化によってブラックBOXになってしまっては事業継続に影響します。
また、オフコン時代はまだまだ手書き伝票などアナログ業務が主流だったので、少しづつ業務がコンピューター化されていました。
なので、オフコンの中に小さな業務システムがたくさんできるようになったのです。
しかも、それらは各システム間での連携までは想定されずに構築されたので、個別にサイロ化してしまいました。
とはいえ、そんな状況であってもそれが大きく問題視されることはなく、数十年の月日が流れていきました。
2007年問題でやっと気がついた
COBOL言語による業務システムの内製化で結果的に属人化・ブラックBOX化した基幹システムが問題視されることになったのは2007年頃です。
この頃に基幹システムを内製化した当時の情シス部長などの責任者が大量に定年退職を迎える時期になったのです。
これは2007年問題と呼ばれていました。
さて、今も昔も経営陣の多くはITオンチが多いです。
これだけスマホが普及して手のひらの上にコンピューターが収まる時代でも、ITに疎い経営陣が多くいるのですから、スマホがない時代であれば、尚のことです。
ましてやCOBOL言語でDIYのように構築されたシステムには仕様書なんてありませんし、あったとしても、数十年前に書かれた資料なので、当然のごとく陳腐化しています。
基幹システムの最新の仕様書は、情シス部長のアタマの中にしか存在してないのです。
このように会社の経営基盤となる基幹システムが属人化していた事実が大きな問題になってきた時、ERPパッケージという黒船が情シス界隈にやってきました。
ERPパッケージの大流行
ERPパッケージはデータベースが統合化され、業務手順も標準化されているので、ERPパッケージに業務を合わせれば基幹システムが短期間で構築できる時代になったのです。
あらかじめ業務の標準機能を搭載したERPパッケージを導入すれば、企業の競争力は飛躍的に向上すると期待され、多くの企業がERPパッケージを導入しました。
ERPパッケージを導入するには、現在の業務とパッケージソフトの機能を摺り合わせて、ギャップがある部分の機能だけを作れば良いのですから開発時間も短縮され、人件費も減るので安価に基幹システムを構築できるのです。
情シス人員の大削減時代
ERPパッケージの導入が進み出した後に、2009年頃、世界経済はリーマンショックに襲われました。
急激に経営状況が悪化した企業は利益を生まない間接部門の人員整理に取りかかりました。
情シス部門もその対象になりました。
業務システムを内製化していた時代であれば、情シス部門は会社にとって貴重な人材ということになったでしょうが、ERPパッケージの運用では「情シスなんてITベンダーとの連絡窓口に過ぎないんだから、減らして良いんじゃね?」という風潮になり、今、話題の『ひとり情シス』が出来上がったのです。
突然訪れた『2025年の崖』ブーム
2018年に経済産業省は『DX-2025年の崖』という、古臭くなった情報システムが経営の足を引っ張り、放置すれば12兆円の経済損失になると警告しました。
多くの企業に導入されたERPパッケージそのものが保守切れとなり、経営の足かせとなってしまったのです。
とはいえ、これも実はITオンチの経営陣が『コンピューターなんてよく分からんから』と放置した結果なんですけどね。
そして『2025年の崖』の報告書では、これからの企業経営は新興国との競争が激化するので、より変化が激しい時代になると警告しています。
となると業務システムも素早く変化に対応する必要があります。
DX時代の情シスはアジャイル開発による内製化が求められる
変化の激しい経営環境へ業務システムを対応するのであれば、アジャイル開発を導入する必要があります。
しかし、ERPパッケージの導入と引き換えに業務システムを内製化するノウハウを捨て去った情シス部門が今さら業務システムを内製化することなど容易には出来ないのが現実でしょう。
ましてや『ひとり情シス』であれば、基幹システムの安定稼働だけで、てんてこ舞いなハズです。
とはいえ業務システムのアジャイル開発は時代の要請であり、これから必須になるでしょう。
幸いなことにアジャイル開発に最適なローコード開発ツールが増えつつあります。
こんなにあるローコード開発ツール
アジャイル開発は素早さを求められます。
なのでアジャイル開発に向いている開発ツールの多くは、ほとんどプログラムコードを書かずに業務システムを作れます。
これをローコード開発ツールとか超高速開発ツールと呼んでいます。
代表的なところでは
GeneXsusやWagbyやOutsystemsやWeb Performerといったところでしょうか。
この中で個人的に興味があるのは何かといえばOutsystemsだったりします。
いずれの開発ツールもほとんどコードを書く必要がないので、開発ツールの操作方法は比較的すぐに習得できるでしょう。
しかし、開発ツールの操作方法が分かっても業務システムは作れません。
業務システムの構築で一番、大切な能力は『業務部門がどんなシステムを求めているのかを理解する設計力』なのです。
いわゆる要件定義をまとめあげる能力が非常に重要なのです。
まずはデスクトップ型のツールで小さなシステムを内製してみる
またこれらのローコード開発ツールの導入には数百万円の費用がかかります。
ツールの使い方を習得するにも専門教育が必要になるので、講習自体に数十万円掛かります。
となると使いこなせるかどうかも分からないツールの導入に大きな覚悟が必要になります。
多額の導入コストをかけても開発ツールを使いこなせないのでは、情シスの評判は劇落ちてしまい、経営陣からは『この役立たず!』と口汚い言葉で罵倒されるのは容易に想像できますよね?
そう考えるとけっこうなバクチを打つことになります。
であれば、まずはデスクトップ型の開発ツールを導入して、小さく内製化の勘所を養う方が良いでしょう。
小さな開発をACCESSやFileMakerでやってみる
デスクトップ型で小さく開発できるツールの代名詞といえば、ACCESSですね。
ACCESSの大きなメリットは書籍は山ほどあるし、ネットでもググれば記事もたくさん見つかるという点でしょう。
Access レポート&フォーム 完全操作ガイド ~仕事の現場で即使える
- 作者: 今村ゆうこ
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2017/12/27
- メディア: 大型本
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そういう意味では非常にとっつきやすいと言えます。
ですが、開発経験がまったくない人からすると、ACCESSは敷居が高いと感じる人も多いのではないでしょうか?
なので「またか」と思うかもしれませんが、まずはFileMakerで業務アプリを作ってみるると良いと思います。
なんでACCESSはなくFileMakerなのかというと、FileMakerのほうが圧倒的に簡単だからです。
FileMakerってよくも悪くもなんとなく作っても、なんとなく動くのが大きな特徴です。
つまり動くアプリを容易に作れるのです。
しかしACCESSはなんとなく動くアプリが完成する前に多くの人が挫折してしまう姿を見てきました。
ACCESSは1万5000円程度、FileMakerは6万円と価格差はありますが、いくら安くても使い方が分からないツールを買うのは無駄になります。
Microsoft Access 2019(最新 永続版)|カード版|Windows10|PC2台
- 出版社/メーカー: マイクロソフト
- 発売日: 2019/01/21
- メディア: License
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とはいえ両方買っても7万5000円くらいなので、両方試してみるというものアリだと思います。少なくとも数百万円も掛かるローコード開発ツールを導入するよりは全然、安い買い物です。
またACCESSもFileMakerも「データベース、画面、帳票、スクリプト」が一体化しているのでMySQLなどのデータベースが不要です。
そういった準備の手間の少なさも業務アプリ作成の初心者には大切な部分でしょう。
FileMakerの学習書は無償で手に入れることができる
FileMakerってあまり書籍が売っていない印象がありますが、実はFileMakerの公式サイトで、初級編・中級編・上級編・関数編の学習書が無償で公開されています。
FileMaker Master Book と FileMaker 関数・スクリプト ビギナーズガイドは、FileMaker 公式トレーニング教材です。
ご自身のレベルや、学習したい内容に合わせたコンテンツを無料でダウンロードして、業務上の問題解決のためのカスタム App 作成を今すぐ始められます。
それ以外だとYouTubeでも学習教材が公開されています。
FileMaker プラットフォームの紹介(はじめての FileMaker カスタム App 作成)
それ、FileMakerでできますよ~FileMakerプラットフォームの活用法~
実際のところ、どのローコード開発ツールを使ってもいいのですが、まずは「業務システムの開発ってこうやればいいのか」という経験を積むことが大切なのです。
業務システムを作るために重要なのは要件取りまとめるチカラです。
そして要件からデータベースの構造(データモデル)を考えるチカラですね。
これらは、どのツールを使うのであっても必要な能力になります。
と考えると、まずはデータモデリングについても学習しておいた方が良いですね。
データモデルの学習で定番なのは渡辺幸三氏の書かれた書籍です。
このあたりの書籍が分かりやすいかと思います。
あとはこの本ですね。
とにもかくにも、まずは自分で業務アプリを作ってみることで、視野が広がると思います。そして実際に業務アプリを作ることで、システム構築の勘所が掴めるようになります。
すると業務システムを外注する場合でも、見積もりや設計内容が適正なのかどうかを自分なりに判断することができます。
是非、業務アプリの作成にトライしてみてください。