「0から1」の発想術を読んでみました。
まさに目からウロコのような発想が満載で驚きです。
こんにちは!松田軽太です。
また本書で紹介されている事例の幅広さに「さすがは大前研一氏だなぁ」と感心します。しかもその口調はかなり辛口です。
まず冒頭から「自分はSNSを使いこなしている」「ネット検索を何でも調べられる」ということに自信を持っているだけで「ITに強い」と思っているなら勘違いも甚だしい、と叱責します。そんなものはカラオケで上手く歌えるのと大差がないというのです。
ITに強いと豪語するなら、検索システムを構築するような実績が出来てからだ、と。
この本で紹介されている考え方は以下の11種類です。
【基礎編】
1.SDF/戦略的自由度(Strategic Degrees of Freedom)
2.アービトラテージ(Arbitrage)
3.ニュー・コンビネーション(New Conbination)
4.固定費に対する貢献(Contribution to the fixed cost)
5.デジタル大陸(Degital Continent)時代の発想
6.早送りの発想(Fast-Forward)
7.空いているものを有効活用する発想(Idel Economy)
8.中間地点の発想(Interpolation)
9.RTOCS/他人の立場に立つ発想(Real Time Online Case Study)
10.すべてが意味することは何?(What does this all mean?)
11.構想(Kousou)
【実践編】
1.感情移入
2.どんぶりとセグメーション
3.時間軸をずらす
4.横展開
大前研一著「0から1」の発想術から引用
う~ん、見出しだけ見ると、なんだか馴染みのない言葉だらけです。
しかし、そこで語られる事例を読むと「あー、あの会社のアノことか!」と納得できるものばかりです。
SDF/戦略的自由度
例えば「SDF/戦略的自由度」ですが、ここで引き合いに出されている企業は家電メーカーのシャープです。
シャープのしくじり先生的な事例として記憶に新しいのは液晶テレビ事業での大失敗ですね。
商品開発をしていると、どうしても競合他社とのスペック競争に陥りがちです。
世界最高の画質とか3D画像が楽しめるとか最高の音質とか。携帯電話であれば、世界最軽量とか。
当然、性能が上がれば価格も比例して上がります。
しかし商品を買うお客さんとしては「もう十分、画質が良くなっているからこれ以上は必要ない」と思っていたりします。
すると「じゃぁ、価格が安くて機能が少ないこっちの方がいいや」となってしまいます。
こういうスペック重視に陥った商品は沢山ありますよね。
これらの商品に共通しているのは「お客さんは何を望んでいるか?」という視点が欠落したまま、商品開発を進めてしまうことにあります。
それによって本来のニーズとかけ離れたスペックお化けの商品となり、結果として売れなかったりします。
固定費に対する貢献
個人的に興味深かったのはまず「固定費に対する貢献」という章です。
ここで紹介されている事例はクリーニング店と黒川温泉です。
いずれも大企業の事例ではなく、小さな会社が協業することで、自社の設備を最大限に稼働率を上げることで、利益をもたらすという内容です。
クリーニング店であれば、洗濯する機械はかなり大型で設備投資金額も大きくなります。
設備は固定費ですが、これを近隣のクリーニング店が協業することで、それぞれのお店の空き時間に他のお店の洗濯物を洗うことで洗濯設備の稼動率をあげる発想です。
また黒川温泉は、温泉街にある24の温泉が共同で、黒川温泉自体をひとつの温泉と定義することで、お互いの競争を避けるという発想です。それによりお客さんを黒川温泉街の中で回遊させるのです。
固定費マネージメントという発想ですね。
デジタル大陸/時代の発想
また「デジタル大陸/時代の発想」の章で大前氏は「AG32年」という定義をしていて斬新でした。AGとは「After Gates」の略です、つまりビル・ゲイツの登場後の世界という定義です。そうビル・ゲイツがWindowsを販売してから32年が経ったのですね。
確かにデジタル革命が始まったのはWindowsがキッカケであったかもしれません。
何しろコンピューター業界の巨人であるIBMに大打撃を与えたくらいですから驚きです。
「え?パソコンにIBMの大型コンピューターシステムが負けちゃうの?」と。
Windowsが企業システムに普及してからというもの、大型オフコンの時代に終止符を打ってしまいました。
そして「空いているものを有効活用する発想」の章は正に現代を象徴しています。
事例としてはライドウェアのウーバーと民泊ビジネスのエアビーアンドビーです。
本書の「おわり」でも触れられていますが、僕がふと思った日本企業の事例はラクスルです。ラクスルは安価にチラシなどを印刷してくれるサービスですが、ラクスル自体は印刷工場をもっているのではなく、空いている印刷機のある会社に仕事を渡すというウーバーやエアービーアンドビーと同じようなマッチング事業です。
また印刷会社からすれば「固定費に対する貢献」のように設備の空き時間を減らせるというメリットがあります。
最近はラクスルは「ハコベル」という運送業でトラックの空きを有効活用するマッチングサービスを開始しました。
これらの事例を眺めてみると「お客さんは何を求めているか?」に対する答えを出せた企業が成功しているのだと分かります。
ともすれば同業の企業間でお客さんの求めるものとはかけ離れた不毛なスペック競争に陥ってしまいがちです。
20年前であれば、それでも売上は維持できました。お客さんは企業や小売店の発する広告しか情報が無かったのですから。
しかし現代は情報を組み合わせて、需要の本質を探り当てさえすれば、生産設備や店舗を持たずとも、大きな事業になるんですね。情報の威力のスゴさを感じます。
他にもリクルートのスタディサプリによる学習塾のアプリ化など、このようなデジタル革命は今後もますます増えていくのでしょう。
よく「10年ひと昔」と言いましたが、これからは5年後の世界もどう変っていくのか予測ができない時代です。
まさに激怒の時代を僕たちは生きているのですね。
仕事が煮詰まった時に、この本を読むと刺激を受けてアイデアがひらめくかもしれません。