もう連日の新型コロナウィルス報道で気が滅入る日々ですね。
こんにちは! 松田軽太です。
そんな中でトヨタ自動車の豊田章男社長の力強いメッセージが話題となっています。
誰かの書いた原稿を棒読みする政治家と違って、自分の言葉で訴えかける豊田章男社長は迫力が違いますね。
リーダーとはこうあって欲しいものです。
今は大変な時期です。
豊田章男社長のおっしゃるように『明けない夜はない』と信じてみんなで乗り越えましょう。
さて、そんな先行きの見えない状況ではありますが、少し明るい話題を見つけました。
ネタ元は日経コンピューター2020年4月2日号の『満開RPA』という特集記事です。
大手企業の80%がRPAの活用に積極的
2016年ごろから普及しはじめたRPAですが、導入当初は銀行や生命保険会社といった
サービス業の大企業を中心に普及していきました。
これらのサービス業は大量の書類を業務システムに入力する仕事が多いので、RPAと
相性が良かったといえます。
これからRPAの導入を検討している会社でも、まずは経理や総務からの運用を検討されている会社が多いでしょう。
MM総研の『RPA国内利用動向調査2020』を見てみましょう。
この調査によるとRPAは年商1000億円以上の大手企業の51%で導入済みとのこと。
そしてRPAの導入検討中なのは30%なので、実に80%の大手企業がRPAの活用に積極的ということになります。
年商50億円~1000億円以下の中堅・中小企業では、導入済みは25%ですが、検討中は44%なので併せると約70%の企業がRPAに期待をかけていると言えますね。
出典:MM総研『RPA国内利用動向調査2020』
今は新型コロナウィスルへの対応で、どこの会社もてんやわんやだとは思います。
しかし、それも永遠に続くわけではありません。
いずれ新型コロナウィスル騒動も収束します。
すると次に課題となるのは人手不足です。
こちらは特効薬はないので避けられない問題です。
なので人手不足対策として、RPAが再び脚光を浴びると思いますので、RPAの導入を検討している会社の情シス部門は、今から準備を始めておいた方が良いでしょう。
RPAの活用範囲が管理部門などの事務職から製造部門へ拡大
さて大手企業では2016年から始まったRPA導入ですが、それから4年経った2020年はどういう状況になっているのか気になるところですね。
では日経コンピューターの『満開RPA』を参考に見ていきます。
事例として上がっている『三菱ケミカル』や『JEFプラント』や『村田製作所』や『キリンビール』といった大手製造業では、生産現場へRPAが展開されて、大きな効果を出しているのです。
【活用事例】
・三菱ケミカル:工場内の工事に関する指示書データを業務システムに入力する。
・JEFエンジニアリング:プラントの図面データを基に強度を計算する。
https://www.jfe-holdings.co.jp/investor/library/itreport/2019/pdf/4.pdf
・村田製作所:製品の納期や個数を調べて答える
・キリンビール:製造ラインの保守部品などの発注データを業務システムに入力
『働きづらさ改革』にもRPAは有効
人手不足への対応として、けっこう重要だと感じるのは「仕事の質の向上」でしょう。
RPAはあらかじめ決められた手順を繰り返すような作業に向いています。
事例では第一生命での会議資料の自動作成が取り上げられています。
会議のための資料作りを行うために、社員が早朝に出勤して会議資料を
作成していたというのです。
しかし、その資料は社内システムからダウンロードしたデータを加工する
という定型作業だったのでRPA化ができました。
その日の業務の準備をするために社員が輪番で朝早く出勤するということは
よくありますよね。
例えばある曜日になると得意先から大量の発注データが送られてくるので
その日は早朝から出勤してEDIデータを取り込み仕事の段取りをする、といった
作業です。
これらは定型作業なのでRPAが向いていると言えます。
RPAに仕事をさせられれば、わざわざ早朝出勤などする必要がなくなるので、職場の働き方そのものをカイゼンできるのです。
ちなみに『第一生命 RPA』でググったら、Blue Prismの『第一生命におけるRPA展開の軌跡と変革への挑戦』という資料が見つかりました。
こちらの資料も参考になるので、ご覧いただけると良いかと思います。
RPAを導入するための各社の工夫
2019年あたりまではRPAを販売するITベンダーが『プログラミング未経験者でも、簡単にRPAで、どんな業務も自動化ができる』みたいなノリで宣伝していたため、RPAに過剰な期待をしてしまい、その結果、RPA業界では『RPAの幻滅期』という言葉が蔓延しました。
もうこの際だからハッキリ言っておくと、RPAは誰でも簡単に作れるような代物ではありません。
ローコード開発ツールだと思った方が正しいでしょう。
ちなみにローコード開発ツールとは何かというと、プログラミング言語を書かずにプログラムを作ることができる開発ツールです。
たとえば身近なところではEXCELマクロのVBAでは、ナゾの呪文のようなプログラム言語を書きますが、ローコード開発ではあらかじめ用意されているコマンドを組み合わせるだけでプログラムが作れます。
RPAが普及した一番の要因は、このようなローコード開発が可能だったからでしょう。
しかしローコード開発だから誰でもロボットを作れるかというとそうでもありません。
あくまでも習得しやすいというだけで、システム構築するためのセンスや発想力は必要になります。
例えばUiPathというRPAツールを立ち上げるとこんな画面が表示されます。
左側の「アクティビティ」から命令を選んで、真ん中の「シーケンス」と書かれた部分に作業の手順を設定していきます。
さて、この画面を見て「これなら誰でも簡単に出来るぞ!」と思えますか?
おそらく今までプログラムを作ったことのない普通の人は、この画面を見た段階でなんだか分からないのではないでしょうか?
「ちょっと興味がわいてきたぞ!」という人は、ちなみにこちらのブログ記事に具体的な作成手順が載っているので参考にしてください。
内製する人材が居ないなら、RPAを得意とする会社に支援してもらうという手もあり
なのでRPAを社内に定着させるには、まずこのようなRPAツールの使い方をマスターした人材が必要になるのです。
そこを用意しないで、とりあえずでRPAに取り組むと、RPA開発者は孤独な中で悩みを抱えてしまい、早晩、壁にぶち当たってRPAそのものが頓挫してしまいます。
とはいえ、ひとり情シスのように現在の業務だけで手一杯という会社も多いと思います。
そのような場合は、RPAを得意とする会社に支援してもらうという手もあります。
最初は社外の会社に協力してもらいつつ、社内の人材を育てるのです。
RPA導入を支援してくれる会社は沢山あります。例えば下記のような会社です。
RPA支援というサービスであっても、意外に各社でコンセプトが違っているので、実際にサービス内容を問合せしてみると良いでしょう。
いずれにせよRPAツールは「買ったらその日から誰でも簡単に業務を自動化できる」なんてものではありません。
RPAを導入して定着させるには「RPAの設計や運用で困った時に相談できる人」を用意しておかなくては無理です。
そこを履き違えてしまうと、きっとRPAに幻滅してしまうでしょう。
フツウの人はRPAをまだ理解していない
RPAツールを使える人材を確保できたら、次はRPAで自動化する業務を見つける旅にでなければなりません。
きっとRPAを使えるようになったアナタは「これなら業務を自動化できるぞ!」とテンションが上がっていることでしょう。
なので、テンションあげあげで「RPAで業務の自動化をすすめます!自動化したい業務を連絡してください!」と言ったところで「では、これの仕事を自動化したいです」というような反応が返ってくることはないしょう。
なぜなら「フツウの人」はRPAをまだ理解しているとはいえません。
おそらくRPAとAIの違いも分からないのがフツウです。
RPAに対する知識の差がありすぎるのです。
なので、現場作業を自動化するには
「RPAでの自動化に向いている作業は何か?」
「こういう作業がRPAに向いている」
といったように、現場作業者に対して丁寧に説明してあげる必要があります。
しかし説明したら、何か相談がすぐに来るかというと、それも難しいでしょう。
何しろ現場作業者は実務で忙しいから業務棚卸なんかやっている暇はありません。
場合によっては最初はアナタが現場作業者の仕事を観察しながら「この作業なら自動化できますよ」と教えてあげるくらいのことをした方が良いでしょう。
RPAでの業務自動化の第一歩は「自動化できそうな作業を掘り出す」ことなのです。
「RPAでの業務自動化は1日してならずじゃ」くらいの気持ちでいない、逆にアナタのモチベーションが下がってしまいますよ。
「正しい道具の使い方」を学習して属人化を防止する
業務を自動化するための救世主と言われているRPAですが、実のところRPAはローコード開発基盤なので必ずしもRPAだけが業務を自動化するツールではありません。
身近なところではEXCELマクロ・EXCEL-VBAでも自動化はできます。
よく「EXCELマクロは属人化するから止めた方が良い」という声を聞きますが、どんなツールであれ社内での開発ルールを決めなければ、いずれ属人化してしまいます。
かといって逆に属人化を恐れて何もしなければ、いつまで経っても非効率は作業はカイゼンされません。
実はこの辺りのバランスが難しいのだと思います。
我流のまま突き進むと属人化してしまう
属人化の多くは、ネット記事などを見ながら「とりあえず動くモノを作る」から脱却しないことが原因です。
ITツールも仕事を便利にする道具にすぎないので、長く運用するのであれば多少の時間とお金をかけてでも「正しい道具の使い方」を学習して、我が家流から脱却することも考えましょう。
とはいえ社外の講習を受けるには数万円の費用が掛かります。トップダウンで「RPAを推進するぞ!」という決めた会社であれば、講習費用も会社が出してくれるでしょうが、まずはRPAがどの程度、自社で役立つかを確認するという段階では、なかなか講習費用も出してもらえないでしょう。
なのでまず、RPAがどんなモノなのか体験したいというのであれば、UiPathのCommunity EditionでRPAを体験してみましょう。
そしてUiPath アカデミーで学習していきましょう。けっこうUiPathは学習環境が充実していますよ。
まずは書籍で学習したいという場合はこんな本もあります。
あるいは「まずはRPAではなくEXCELで自動化してみたい」というのであれば、こちらの書籍を参考にすると良いでしょう。
新装改訂版 Excel VBA 本格入門 ~マクロ記録・If文・ループによる日常業務の自動化から高度なアプリケーション開発までVBAのすべてを完全解説
- 作者:大村 あつし
- 発売日: 2020/01/22
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
RPAや仕事の自動化については、下記の記事も書いていますので、是非、お読みいただけばと思います。
RPAを「超高速開発ツール」と位置づけすると『ひとり情シス』の強い味方になるハズだという話 - 松田軽太のブロぐる