松田軽太のブロぐる

企業の情シスで働いています。会社の中では何をしてるのかナゾな職場の情シスあるあるなどや読んだ本のことなどを思いつくままに書いています。

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情シス部門に潜む闇と病みの話

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沢渡 あまねさんの「変革を妨げる情報システム部門、そんな組織が生まれる企業のカルチャーとは」という記事を読んでいたたら、いつの間にかに首を縦にブンブン振っている自分に気がつきました。

 

xtech.nikkei.com

 

こんにちは! 松田軽太です。

 

この記事のどこに興味を持ったのかを整理していきたいと思います。

 

なぜ情シスは保守的で新しモノ嫌いになるのか?

まずは冒頭のこの一文。

 

「ウチの会社、情報システム(情シス)部門がイケていなくて……」――。
管理職や現場の社員のこうした嘆きを、筆者も四六時中耳にしている。

 新しいITツールやクラウドサービスを使って仕事をしたくても、決まって情シス部門が待ったをかける。
ある者はセキュリティーを理由に、そしてある者はコストを理由にする。中にはせっかく全社導入したTeamsやSlackを最も利用しないのが情シス部門だというケースもある。
かたくなにメール、電話、対面でのみコミュニケーションを取る。
開いた口が塞がらない。

 

多かれ少なかれこういう事で揉めるのは良くあるのではなかろうか?

 

なぜ情シスがこういうマインドになってしまうのかといえば、まずは大前提として今、稼働している既存のシステムを安定して稼働させる必要があるからだろう。

 

いわゆる「守りの情シス」と言われる部分であろう。

 

情シス側からすれば、まずは在庫管理システムや販売管理システムなどの基幹システムの安定運用が大前提であって、そこに素性もよく分からないツールと連携させろと言われても、まずは安全性を確保できなければ安易に承諾できるハズもない。

 

そして場合によってはクラウドツールの中には、数年後に無くなってしまうサービスもあるでしょう。


そのクラウドツールが業務に載っていて、将来、万が一、サービス停止になったとたら、その代替え先を探させと情シスが迫られるのは間違いないでしょう。

 

仮に事業部門の責任と判断で導入したツールであっても、導入した当初の人たちが異動していたりやチームが解散していたら、利用者は「だってコレがないと業務できないから困るんだけど」と文句をタラタラ言われるわけです。

 

そんな無責任の後始末なんかしたい人なんて世の中にいるワケありません。


そしてその後始末がどんなに大変な作業であったとしても、それを評価されて給与に反映されるでしょうか?そんなことはまずないでしょう。


何故ならツールを移行するという苦労を評価する側の「偉い人たち」は誰も知らないから。

せいぜいスマホの機種変と同じ程度に考えているんじゃないでしょうか。

 

そういう過去からの経験があるので、まずは守りの姿勢になりがちなのですよね。

 

「コンピューターなのだから合っていて当然」という発想

次はこちらの一文を。

 

無謬性主義


無謬性(むびゅうせい)とは、誤りがないこと、間違っていないことを意味する言葉だ。あらゆる仕事を正確にこなさなくてはならない。ミスがあってはならない。そのような考え方である。

 

官公庁組織や金融機関にありがちで、完璧主義と言ってもよいであろう。
そして官僚的な組織でチャレンジが起こりにくい、皆が石橋をたたいて渡ろうとしない一因は、無謬性主義が強すぎるためである。

民間企業においても、経理、人事などオペレーション色の強い事務職においては、無謬性が高く評価される。


とにかく決められた作業を正確にこなす。数字を間違えない。


ミスがあれば即減点。例えば新しいITツールを導入し、それで業務を一瞬でも滞らせようものならゲームオーバーだ。その後リカバリーして軌道に乗ったとしても、人事評価上はゼロかマイナスである。


期末の業績評価面談でも「うまくいかなかったこと」「ミスをしたこと」だけを挙げ連ねられ減点評価される。


これもよくありがちですよね。

 

特にITに疎い人は「コンピューターなんだから合っていて当然だろ!」って怒鳴り込んできたりする人もいます。

 

そしてたいていは自分の操作ミスだったりもするんですが「間違えて操作できるようになっているコンピューターが悪い」と開き直ります。

 

すると中には「そうだよな、人間は間違えるものなのだから、それを間違えないようにするのがコンピューターの役目だよな」と同調してくる人も出てきます。


こういう発想になる人は、根本的な事を忘れています。

「コンピューターを動かしているプログラムは人間が書いている」ということを。

 

そもそも業務システムはビジネスロジックというルールに基づいて設計されています。

なのでルールを決めているのは、その業務システムを使っている業務部門なのです。

 

ところが長年、業務システムを使っていると、業務システムを使うことが当たり前になってしまうと自分たちが定めたルールだということも忘れてしまったりします。

 

そうすると「この業務システム、使いにくい」とか言い出すワケです。

 

また新しい便利なツールがあったとしても、それを既存の業務の中に組み込むとしたら、少なからず業務の流れが変わります。変化するということは注意してなれば事故の発生源になります。

 

また人間は変化を嫌う生き物です。

ちょっと変わっただけでも大騒ぎする人もいます。

 

それであれば、多少、不便であったり非効率であったりしても、今のままやり続けてもらった方が情シス的には余計な手間がかからず平和で安泰なのです。

 

根強く残る「情シスはコストセンター」扱い問題

続いてこの一文。

 

コスト削減至上主義

 

事務職を含む管理部門は、直接利益を生んでいないがゆえにコストにシビアになりがちである。年間でコストをいくら節約したかあるいは削減したかが評価される。ここに2つの大きな問題がある。

 

1つは、やらないことがよしとされがちな組織風土をつくってしまうことだ。新たな投資をしない。何もしない。今までと同じ仕組み、今までと同じやり方で淡々と日々の業務をこなす。前述の無謬性主義との合わせ技で、何かトラブルが起こったら嫌だからなおのこと、現状維持の引力や同調圧力が強くなる。こうして、業務部門の新たな提案や社員の要望に対して「断る情シス」が定常化してしまう。断るため、やらないための部内議論にひたすら時間をかける。

 

もう1つは、ITがコスト削減の手段の域を脱しないことだ。ITはあくまで既存業務の効率化や省力化のための仕組み。DXが求められる時代においてITは、新たなビジネスモデルを実現したり、データとデータの掛け合わせで今までにない価値を創造したり、人の動線を変えてキャッシュポイントを増やしたりと、コスト削減ではなく利益創出やブランド価値向上の武器として活用すべきだが、いつまでたってもその発想にならない。

 

これも長年、言われていることですよね。

 

「管理部門は営業部門や製造部門と違って利益を生まないコストセンターである。
つまり管理部門の連中は営業部門や製造部門といったプロフィットセンターに食わせてもらってるだから、文句言わずにプロフィットセンターの活動を支援しろ!」

 

なのでコストセンターが利益を出す方法となると、コストをカットするしか術がないので、ケチケチ作戦に邁進することになります。

 

最近はDXブームで「事業のスピードにシステム開発がついてこれないので、やっぱり内製すべき」みたいな流れになってきていますが、海の物とも山の物ともつかないDXの為に、PoCとしてシステム投資ができるのは、大手企業くらいではないでしょうか?

 

コロナ禍、戦争、物価高騰、資材不足などなど、不安定で先行きの見えない令和の時代においては、中小企業は守りの経営にならざるを得ないでしょうから、そう簡単に情報化投資をしてくれないでしょう。

 

ヘタしたらパソコンの入れ替えだって躊躇する会社もあったりするでしょう。


「このパソコン、まだ使えるだろ?工場の設備なんか古くても動いているだろ。壊れるまで使わないともったいない」と言ってWindows7を使い続けてたりする会社もあるのではないでしょうか?

 

ITに疎い人たちはセキュリティに対しても意識は低いでしょう。本音の部分では「コンピューターウィルスに狙われるのは、有名な大企業だろう?我が社のような地味な会社なんか狙われるハズがない」とタカをくくってたりするでしょうから。

 

事務職扱いの賃金テーブル

そして大問題なのがこちらの一文。

 

人事評価や給与テーブルが「事務職」扱い


「情シス部門の人材定着率を上げようといろいろ試みているものの、既存の給与テーブルが壁だ」。

ある企業の情シス部門の担当者はこうつぶやく。彼女いわく、その会社では情シス部門は事務職扱い。給与レベルもITエンジニアを採用するにはお寒く、採用や定着に苦労しているという。

 

給与レベルだけでなく、人事評価の項目や考え方も旧態依然で「事務職然」としていて、IT人材の活躍を妨げている。そんなケースはこの企業に限らず全国で散見される。

 

これですよ、これ!

人手不足で困って人を採用したいと考えている多くの情シスの責任者はこの問題で悩んでいるのではないでしょうか?

 

DXで先行するような大手企業はシステム小会社を立ち上げていたりします。


たとえば日経クロステックには「ニトリ・ビックカメラ・カインズが先行、システム子会社の新潮流「受け皿型」とは」という記事があります。

 

 

 

xtech.nikkei.com

 

ニトリHD、カインズ、ビックカメラといったDXに意識の高い企業は、内製する体制を整えるためのITエンジニアを確保できるように本業の小売り部門とは別の会社を立ち上げて本体とは違った賃金体系を用意しています。


たとえば本業の平均給与が500万円~800万円であれば、システム子会社の給与は700万円~1500万円といったレベルで厚遇するのです。

経営者がDXを意識しているような大手企業だとこういうことが出来るのでしょう。

 

でも中小企業ではどうでしょう?

 

とくにJTCと言われる創業数十年を越えるような伝統的な企業で、ITエンジニアを確保するためにこういう大胆な施策を打つことができるでしょうか?

 

おそらくは「情シスの人材だけにそんな高額な給与を払うだと?そんな不公平なことが許されるワケないだろ!いくら人が集まらないからって世間はどうか知らないが我が社には長年築いた我が社のルールというものがある。ましてコストセンターの情シス人材だけに高給を払うなど誰も納得せんだろうが!」と一喝されるのが関の山でしょう。

 

つまり中小企業での情シス人員は、ちょっとパソコンに詳しい事務員に毛の生えた程度」という認識なのです。

 

そもそもの扱いが「ちょっと器用な事務員」なので、当然のごとくツマラナイ雑用も押しつけられます。

 

なので、せっかく採用できた有能なIT人材も「こんな仕事をやりたくて、入社したワケじゃない」と逃げ出してしまうのです。

 

ではどうすればいいのでしょうか?

さて、ここまでザンネンな理由ばかり書いてきましたが、ではどうすれば良いのでしょうか?

 

もし、たまたま有能なIT人材を採用できて、その人がその会社にマッチした業務システムを設計して内製したとします。


数年後にそのIT人材が退社したら、社内に残るのは独自システムです。


しかし、市販されていないその会社独自の業務システムなので中の構造は誰も知らない謎のシステムです。

 

どうにもならなくなってから「この業務システムと全く同じシステムを作ってくれればいいんだ」とITベンダーに丸投げしようと思っても相手側のITベンダーが請け負ってくれるとは限りません。炎上しそうなヤバい案件だと気がついたら逃げ出します。

 

ITベンダー側も選ぶ権利があるのですから。

 

事務職レベルの賃金テーブル以外が用意できないのであれば、いっそ有能なIT人材の雇用は諦めて相性の良いITベンダーを探した方が良いかもしれません。


しかし外注である以上は、社内のITエンジニアのように迅速なシステム開発は難しいでしょう。

 

そこを割り切れずに「システム開発のスピード感を優先したい」ので内製にこだわるのであれば、たとえばリモートワークを認めるなどの勤務形態に柔軟性を持たせたり工夫をする必要があるでしょう。

 

「これが我が社の代々伝わる伝統的なルールだ」と押し通すのだと、よっぽど自社の熱心なファンでもない限り、優秀なIT人材は確保できないと思いますよ!

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

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